宇多田ヒカル(35)が9日、千葉・幕張メッセで、12年ぶりのコンサートツアーの千秋楽公演を開催した。この日はデビュー20周年の記念日で、父で音楽プロデューサーの宇多田照実氏(70)と母の歌手藤圭子さん(享年62)への感謝を、自らの言葉で伝えた。アニバーサリーをファン1万4000人から祝福された。

宇多田はアンコールでデビュー曲「Automatic」を歌い終えると、語り出した。「せっかくこんな場だし。私が、ありがとうって言いたい人たちが2人いるんだけど」と前置きし、「私を生んで育ててくれた母親と父親に、ありがとうって言いたい」と続け、大きな拍手を浴びた。

「人としてはもちろんだけど、ミュージシャンとしても、母親の音楽に対する情熱と、私の才能を周りに言って信じてくれた気持ちがなかったら、こういう仕事に就こうと思わなかったと思うし。父親がマネジメントをずっとやってくれて、よく会うんだけど、面と向かってだとなかなか照れくさくて言えなくて。ちょっとぜいたくだけど、この場を借りて、20年間ここまで来られてありがとう、と言わせてください」

「はい、以上です」と照れくさそうに笑うと、大歓声があがり、会場は温かい拍手で包まれた。

15歳だった98年、シングル「Automatic」で鮮烈デビュー。「学校の帰りに友達とCD屋さんに行って、友達が視聴したりして」と当時を振り返った。「でも、(オリコン)1位にならなかったんだよね。『だんご3兄弟』が強くてずっと1位だった。すごい悔しかった、正直」とおどけた上で、「母親の三十何週連続1位っていうのは本当にすごいんだな、って思いました」と話した。初アルバムと2枚目アルバムで37週連続1位を記録した藤さんに敬意を表した。

ライブ冒頭では「みんな、待たせてごめんね」とあいさつ。新旧の楽曲を織り交ぜた構成で魅了した。11年から活動休止し、再婚、出産、離婚も経験。13年には、藤さんが亡くなる不幸もあった。「いろいろあって、ライブがもうできないんじゃないかと思った時もあったけど、今日こうしてみんなの前に立てることは、幸せなことです」。

来年1月18日には新曲「Face My Fears」のリリースも控える。両親への感謝をかみしめ、今日10日から始まるデビュー21年目も、歌声でファンを魅了する。【横山慧】