女優岩下志麻(78)が20日、東京・新文芸坐で、女優デビュー60周年を記念したトークショーを行った。

岩下は58年4月にNHKドラマ「バス通り裏」で女優デビューしている。岩下は「人間で言えば還暦。長い年月、女優をやってきたとつくづく思います。でも私にとっては毎日が無我夢中で、60年はあっという間でした」と振り返った。

同劇場では、この日から岩下の出演作20本を上映している。ラインアップは、夫篠田正浩監督の69年の作品「心中天網島」や77年「はなれ瞽女おりん」をはじめ、五社英雄監督の86年「極道の妻たち」など。

「はなれ瞽女おりん」では目の不自由な役を演じた。岩下は「私、暗闇恐怖症だったんです。とにかく目をつむって何かをしないといけないので、半年間の準備期間で目をつむって食事をして、化粧もして、家の中を歩き、洋服も着る。暗闇に慣れることから始めました」と紹介した。

また、共演には昨年亡くなった樹木希林さんも。岩下は「希林さんは目を開けたままの目の不自由な役でした。瞬きができないんです。瞬きを1度もしないで演じてました。すごいなと思いました。(撮影場所の)新潟から帰る時、作品で使ったはだしにわら草履姿でそのまま船に乗って、新幹線で帰っていきました。ユニークで楽しい方でした」と笑顔で語った。

また、これまで共演経験のある俳優の思い出も紹介。津川雅彦さんには「温かいすばらしい方。役作りをとことんやる人でした」。加藤剛さんには「誠実で優しい方」と亡くなった共演者への思いを語った。

最後は今後の抱負を紹介。「女優グロリア・スワンソンがやった(米国で50年公開の)『サンセット大通り』という映画があるのですが、これをやってみたい。女優のなれの果てをやりたいなと準備にかかっています。虚栄心の強い、傲慢(ごうまん)でエゴイストの女優が最後に殺人事件を起こす話。私は自己否定と自己嫌悪が往復している女優なので、こういうザ女優に憧れていて、ぜひ演じてみたいです。私は平凡な女なので」と笑った。