テクノユニット「電気グルーヴ」メンバーで、俳優のピエール瀧こと瀧正則容疑者(51)が、麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕されてから一夜明けた13日、各所に波紋が広がった。同ユニットの公演中止をはじめ、ドラマや映画、CMなど出演作品は画像を削除するなど対応に追われた。活動はオールジャンルに及んでおり影響の大きさは計り知れず、損害賠償請求額はトータルで10億円超えの可能性も出てきた。

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瀧容疑者は12日に都内やその周辺で、コカイン若干量を摂取した疑いで、関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕され、13日午前3時25分ごろ、取り調べを受けていた東京・九段下の同部を出て、勾留先の警視庁湾岸署に同43分に車で移送された。夜が明けてから、関係各所は対応に追われた。

電気グルーヴは30周年記念ツアーの真っ最中で、今月15~16日に開催予定だったZepp Tokyo公演は中止、チケットの払い戻しが決まった。さらに所属レコード会社は、CD、映像商品の出荷停止と店頭在庫の回収、デジタル配信の停止を発表した。

放送中のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」(日曜午後8時)は、主人公に密接に関わる足袋店の店主役で、約3カ月先に放送予定の24話あたりまでを収録中だったという。大河制作費は1本約1億円とも言われており、再撮影・編集する場合の損害は大きく、受信料で制作されていることからも、視聴者が納得できる対応が必要になる。17年に、小出恵介が未成年女性との飲酒などで同局の主演ドラマの放送が中止になった際には、同局は損害賠償請求した。

映画も、公開を間近に控えた作品、規模の大きな作品が含まれている。「居眠り磐音(いわね)」(本木克英監督、5月17日公開)は、テレビ局や新聞社が製作委員会に入る、期待のかかった作品。関係者向けの試写については延期が決定し、対応は協議中。「麻雀放浪記2020」(白石和弥監督、4月5日公開)では、瀧容疑者は関係者によると「重要な役どころ」を演じており、配給会社も対応に苦慮している。

14年に大ヒットしたディズニーアニメ「アナと雪の女王」日本語吹き替え版で、瀧容疑者は雪だるまの「オラフ」役。今年11月22日には続編公開予定。ウォルト・ディズニー・ジャパンは声優交代を発表した。同社オンラインショッピングの「アナ雪」関連のサウンドトラックのページなどが削除されている。賠償請求も米国式ルールが用いられると、さらに大きな額になる可能性もある。

今年2月、強制性交の疑いで逮捕、起訴された新井浩文被告の時には、5億円超に上る損害賠償の可能性が浮上したが、瀧容疑者の場合はさらに上回り「10億円超えの可能性が高い」と指摘する関係者もいる。

所属事務所関係者はこの日、謝罪などに追われたという。公式サイトでは事実確認の最中としながら「事態を真摯(しんし)に受け止め、多大なるご迷惑をおかけしております関係各位の皆様へ対応させていただく所存です。本人の処遇につきましては、捜査の進捗を見守りつつ厳正に対処してまいります」と厳しい処分も辞さない構え。事実上、早期復活も困難とみられ、解雇の可能性もありそうだ。