テレビ朝日開局60周年記念5夜連続ドラマスペシャル「白い巨塔」(22~26日まで、午後9時)の対談企画第2回は、物語後半のキーとなる、医療過誤に巻き込まれる夫婦を演じた柳葉敏郎(58)と岸本加世子(58)が登場。「ギバちゃん」「カー子」と呼び合う30年来の親友は、対談でも息ピッタリに盛り上がった。【遠藤尚子】

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88年のフジテレビ系ドラマ「ニューヨーク恋物語」で初共演。気が合い、以来友人関係が続いている。

柳葉 何なんだろうね。

岸本 親戚みたいな感じなんですよね。会うとホッとするし。

柳葉は77年、岸本のデビュー曲「北風よ」を故郷の秋田で買った。

柳葉 あれ、いくつだ?

岸本 15(歳)だ!

柳葉 じゃあ俺も15だ。出会った作品(「ニューヨーク-」)では、僕にとって周りの方はスター。その方たちと仕事ができるっていうミーハーな思いの中にカー子がいて。同い年で、変にウマがあったんでしょうね。

今作では大阪で繊維問屋を営む佐々木夫妻を演じた。誤診に巻き込まれる悲劇的な家族の役だが、岸本はなによりも関西弁に苦労した。

岸本 本当に一生懸命やったんです! でも毎日怒られて。

柳葉 はっはっはっは。

岸本 (柳葉は)秋田弁だから、関西弁下手なのかと思ったら結構上手なんですよ。私、全然できなくて。円形ハゲが4個もできちゃって、終わったら。

柳葉 佐々木家の嫁としてのお芝居は100%。それはもうすごかったですから、現場は。楽しいシーンにしてもつらいシーンにしても、さすが岸本さんというのを感じたんですけど。ただ関西弁だけはな。

岸本 感情入れると東京弁に戻っちゃう。一生懸命やったんですけど、難しかった。

柳葉 難しかったな。でも感情を入れてお芝居するのは、岸本さんは素晴らしい方ですから。

岸本 ギバちゃんだから、より一層気持ちが入ったっていうか。

柳葉 何も出ないぞ(笑い)。

息子役のジャニーズJr.向井康二(24)とは、3人で親子のように過ごした。

岸本 大阪ロケで、私と向井くんをご飯に連れて行ってくださったんです。その席で向井くんに「何があっても頑張って行けよ」って、すごい激励をされて。本当に優しい人だなと思って、感動して。向井くんは泣かなきゃいけないシーンで、テストからずーっと泣くんですよ。聞いたら「本当に柳葉さんを思うと自然に涙が出てくるんです」って。ギバちゃんの包容力というか、優しさ。それが全部作品や役柄につながっているんだなって。すてきな話ですよね。

柳葉 ありがとうございます(笑い)。

相手役は数知れない。気心が知れすぎているゆえ、こんなこともあった。

柳葉 1回怒られたことがあるんですよ、ある監督に。よーいドンで始まったら、ものの数秒で「やめろやめろ!」って。「俺は柳葉と岸本見に来てるんじゃねえんだぞ」って。役になってなかったんですね。あれは反省したな。

岸本 私はその時そうは思わなかったんですけど。いいじゃん、くらいの。

柳葉 この釣り合いなんですよ(笑い)。

次回共演するとしたらどんな役がいいか。

柳葉 何がある? もう妖怪やるしかねえだろ。

岸本 あっはっは。妖怪夫婦。でも若い時は全然思わなかったけど、この年齢になっていい俳優さんになったなと。目の前にして言うのもアレですけど。

柳葉 やめてくれよ(笑い)。

岸本 これから楽しみですよね。これからの柳葉敏郎が。

柳葉 (岸本には)変わらないでいてほしいですね。普段キャッキャ言ってても、彼女が作り出す空気感にどれだけ助けられたか。肩肘張って頑張っていくんじゃなくて、それぞれが経験してきた人生を生かせれば。そんなことができちゃう呼吸があると思ってるんですけど、俺はね。

岸本 うれしい~。

柳葉 焼き肉でいいよ(笑い)。

◆柳葉敏郎(やなぎば・としろう)1961年(昭36)1月3日、秋田県生まれ。高校卒業後上京し、哀川翔らと路上パフォーマンス集団「一世風靡」に参加。81年NHKテレビ小説「まんさくの花」で俳優デビュー。84年「一世風靡セピア」を結成し、シングル「前略、道の上より」がヒット。89年の解散後はドラマ、映画と幅広く活躍。テレビ朝日系「やすらぎの刻~道」に出演中。血液型O。

◆岸本加世子(きしもと・かよこ)1960年(昭35)12月29日、静岡県生まれ。77年TBS系ドラマ「ムー」で女優デビュー。78年から出演した富士フイルムのCMでは、樹木希林さんとのコンビが人気に。映画、ドラマに出演多数。00年北野武監督作の映画「菊次郎の夏」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、16年橋田賞を受賞。テレビ朝日系「やすらぎの刻~道」に出演中。血液型B。

◆白い巨塔 63~65年、続編が67~68年まで「サンデー毎日」で連載された発行部数累計600万部の山崎豊子氏によるベストセラー。教授の座を野心的に狙う浪速大学の外科医財前五郎と、対照的な内科医里見脩二の2人の医師を中心に、教授選、誤診裁判を通して人間の欲望や打算を描く社会派小説。