乃木坂46、欅坂46に続く坂道シリーズのグループ、日向坂46の特長の1つに、「箱推し」のファンが多いという点が挙げられます。「そのアイドルグループ全体、全員が好き」という意味です。

日向坂46は、けやき坂46(ひらがなけやき)として16年5月に結成。当初は欅坂46の2軍的存在でしたが、見る者を幸せにする「ハッピーオーラ」を武器に、地道に人気を獲得してきました。もちろん、中には特に人気の高いメンバーもいますが、グループ全体の雰囲気が好きというファンは多いです。加藤史帆(21)は「ファンの皆さんは、握手会でも、同じ人がいろんなメンバーのところに行ってるみたいです」と笑顔で明かしました。

メンバーたちは、握手会だけではなく、ライブ中にも「箱推し」を実感するといいます。潮紗理菜(21)は「ライブのコールとかでも、皆さんが、どのメンバーに対しても同じだけ声をあげてくださったりするので、すごくうれしいです。『推し』の時だけじゃなくて、誰の時でも大声で言ってくださるので。温かさを感じます」と感謝しているようです。

実は、結成当初は状況が違いました。潮は「けやき坂の最初のほうは、歓声もバラバラでした」と振り返ります。加藤も「確かに。きょんこ(齊藤京子)の時、(歓声が)デカっ! ってみんなでなっていたりした」と明かしました。潮がしみじみと話します。

「それが、だんだんと、私たちがグループになっていくにつれて、同じだけ歓声をくださるようになっていったんです。もちろん、それぞれ個々の気持ちはあると思うんですけど、グループとしての活動の時には、『おひさま』として参加して、応援してくださっている。すごくうれしいですね」

日向坂46のファンは「おひさま」と呼ばれます。人気のあるメンバーの歓声が大きいのは当然かもしれませんが、曲中のコールでどのメンバーも同じように声援を受けるのは、メンバーにとっても大きな心の支えになっているようです。

アイドルグループによっては、楽曲パフォーマンス中に1人1人の名前をコールする際、ファンが推しの時だけ大声を張り上げ、特定のメンバーへのかけ声だけが露骨に大きくなる場合もあります。もちろん、それも1つの応援スタイルですし、「自分はこのメンバーだけが好きなんだ」というファンも少なくないと思います。メンバーが切磋琢磨(せっさたくま)できる環境につながるかもしれません。

ですが、自分の「推しメン」だけに目がいくばかりで、グループや他のメンバーへの応援が後回しになってしまう可能性もあります。場合によっては、自分が好きではないメンバーをおとしめようとして、グループにとっては望ましくない「つぶし合い」が起こる危険をはらんでいるのかもしれません。

坂道シリーズには、比較的「箱推し」のファンが多いように感じますが、特に今の日向坂46にとって「箱推し」の多さは大きな強みになっているようです。テレビ東京系「日向坂で会いましょう」(日曜深夜0時)などのバラエティーで見せる一体感や、グループとして初の写真集「立ち漕ぎ」(8月28日発売)で見せる多幸感や青春感でいっぱいのショットも、その影響かもしれません。個性豊かなメンバーと「おひさま」の良い関係が、グループを勢いづかせているようです。【横山慧】