国際政治学者の三浦瑠麗氏(39)が7日、東京・シアターイメージフォーラムで行われた、ルーマニア、ドイツ、チェコ、ブルガリア、フランス合作映画「タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~」(アディナ・ピンティリエ監督)トークイベントに登壇した。

三浦氏は、美術家のヴィヴィアン佐藤氏が「私は昔、自分の一番近いところに1匹の犬を飼っていて、どうにか飼いならしたい、体と1匹の犬を飼いならしたいという気持ちになった」と自身の内心について語る言葉に耳を傾けた。その上で「女性としての異性との接触だけじゃなくて、人間が人間とぶつかり合う時の距離感というのを、最近は政治的に正しいことを言わなきゃダメになったために、より距離を取り始めているということを監督に批評されているのかな、と見ました」と語った。

「タッチ・ミー・ノット~ローラと秘密のカウンセリング~」は、世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭(ドイツ)で、18年に最高賞の金熊賞と最優秀新人作品賞をダブル受賞した。人に触れられることに拒否反応をおこす精神的な障がいを抱えるローラが、病院で患者同士がカウンセリングをする不思議な療養を目撃する中、自分と同じような孤独感を持つトーマスにひかれ、導かれるように入った秘密のナイトクラブで欲望のままに癒やし合う群衆を目の当たりにする物語だ。

三浦氏は作品を踏まえて、性を含めた人と人の接触についても言及。「自分と自分の体の関係性だけじゃなく、自分と他人の体の接触、性行為を通じた体の関係って、あるじゃないですか? 私たちは性行為に、どうしても支配する、されるを持ち込む。性行為を持つような関係だったとしても一瞬、恐れ、不安を抱く人間の関係性に付きまとう」と語った。

佐藤氏は、ピンティリエ監督が日本での公開時に来日を希望していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、かなわなかったと説明した。それを受けて、三浦氏はコロナ禍における日本の状況についても思うところを語った。

三浦氏 コロナは、人間性をすごく出してしまう。私たちの社会は結構、時間がたっても過去と同じ過ち、差別を繰り返すんだなとよく分かった。これだけ科学が発達しても、政治家が肉体の感覚としての判断を下したり、その国の長い間持っている風土が出てきちゃったりする。

三浦氏は、政府や再選された東京都の小池百合子知事が“夜の街”と称してホストクラブやキャバクラなど、接待を伴う飲食業者を感染源として名指しすることにも疑問を呈した。「ホストクラブの人に積極的に協力してもらっているんだと言ってもいいんですけど、それは本質じゃない。仮に感染が多かったとしても、1つの犠牲となる“黒い羊”を見つけて、その人に全部押しつけてしまえばきれいな結論が生まれるみたいなものを感じる」と主張した。