漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏原作の人気漫画「鬼滅の刃」をアニメ映画化し、10月16日に封切られた「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(外崎春雄監督)が13日に公開から9週目で興行収入(興収)302億円を突破したことが14日、分かった。製作、配給のアニプレックスがこの日、発表した。

13日までの59日間で興収302億8930万7700円、動員2253万9385人を記録。59日間での興収300億円突破は、歴代最多の興収308億円を記録した01年「千と千尋の神隠し」の公開253日目と比較して、5倍近く速い史上最速だ。

公開8週目の6日までの52日間で、興収288億4887万5300円、動員2152万5216人を記録していた。その興収を、さらに押し上げたのは、第3弾の来場者プレゼントとして12日から全国合計75万人に先着で配布した「来場御礼スペシャルブック」だ。

10月16日の封切りの際は、劇中に登場する炎の呼吸を使う炎柱・煉獄(れんごく)杏寿郎を描いた特別読み切り漫画が掲載された入場者特典「煉獄零巻」を、入場者先着450万人に配布。公開2週目の週中には、ほぼ配布が終了していた。「来場御礼スペシャルブック」の配布数は「煉獄零巻」の6分の1だけに、全国の映画館で争奪戦の展開が予想されていた。

「来場御礼スペシャルブック」には主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)を演じる花江夏樹、妹禰豆子を演じる鬼頭明里、我妻善逸を演じる下野紘、嘴平伊之助役の松岡禎丞のコメンタリートークと、劇中で激闘を展開する煉獄杏寿郎役の日野聡と上弦の参の鬼・猗窩座役の石田彰との対談が掲載された。巻末には、キャラクターデザインを担当した松島晃氏による総作画監督修正集も掲載と、ファン垂ぜんの1冊で、週末の全国の映画館には観客が殺到していた。

「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」は、これまで

◆1週目(10月16~18日)興収46億2311万7450円、動員342万493人。

◆2週目(~25日)興収107億5423万2550円、動員798万3442人。公開10日目で「千と千尋の神隠し」が持っていた、興収100億円突破最速記録の25日を19年ぶりに15日間も更新し史上最速。

◆3週目(~11月1日)興収157億9936万5450円、動員1189万1254人を記録。歴代興収ランキングで、同156億円の「アバター」(09年)を抜き、10位に浮上。

◆4週目(~8日)興収204億8361万1650円、動員1537万3943任。同203億円の「ハリー・ポッターと賢者の石」(01年)を超えて日本歴代5位に浮上。また、10月16日の初日から24日での興収200億円突破は史上最速。

◆5週目(~15日)興収233億4929万1050円、動員1750万5285人を記録。

◆6週目(~23日)興収259億1704万3800円、動員1939万7589人を記録し「アナと雪の女王」、「君の名は。」を超えて歴代3位に浮上。公開から39日での興収250億円突破も史上最速。

◆7週目(~29日)興収275億1243万8050円、動員2053万2177人を記録し、同262億円を記録した97年の米映画「タイタニック」を超え、日本歴代興収2位。

◆8週目(~12月6日)52日間で興収288億4887万5300円、動員2152万5216人を記録。「千と千尋の神隠し」の歴代最高興収308億円に、あと20億円。

と日本映画史に残る興収、動員記録を打ち立て続けている。

「鬼滅の刃」は、2016年2月15日発売の「週刊少年ジャンプ」で連載がスタート。5月18日発売の同誌まで4年3カ月の間、休載なしで205話、掲載された。大正時代を舞台に、主人公竈門炭治郎が家族を殺した鬼と戦うために修業して「鬼殺隊」に入隊し、鬼と化した妹・禰豆子を人間に戻す方法を探して戦っていく物語。19年4月から9月までアニメが放送され、人気が爆発的に高まった。

今回の劇場版では40人以上の行方不明者を出しているという無限列車を舞台に、炭治郎たちと史上最強の敵・魘夢との激闘が描かれた。テレビシリーズにも出ていた鬼殺隊の最高位“柱”の1人で、炎の呼吸を使う炎柱・煉獄杏寿郎が、任務に挑む姿が初めて描かれ、後輩の炭治郎らに激励の言葉を投げかけるなど、おとこ気のある姿勢に共感の声が相次いでいる。映像美も評判で、終盤に煉獄が上弦の参の鬼・猗窩座と激闘を演じるシーンをはじめ、アニメを超え、実写の質感があると評価が高い。

4日には、原作の最終23巻が発売された。初版発行部数は異例の395万部ながら、全国で朝から書店に行列が出来るなど社会現象を巻き起こした。506円(税込み)の通常版に加え、竈門炭治郎、禰豆子、我妻善逸、嘴平伊之助のフィギュア4体が同梱された5720円(税込み)の特装版を、予約受注以外に店頭で販売する店もあり、争奪戦も展開された。

原作、映画を含め社会現象的なムーブメントはとどまる気配がなく、映画の上映も21年新春まで続くことは確実。「千と千尋の神隠し」の歴代最高興収308億円まであと6億円…。公開10週目の次週にも、新記録の達成が濃厚となった。