佐藤健(32)が15日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「護られなかった者たちへ」(瀬々敬久監督、10月1日公開)完成披露試写会で、映画で描かれた東日本大震災と、そこから波及した生活保護に焦点を当てた作品について、熱く語った。

佐藤は「東日本大震災というものが、どれほどの被害と悲しみを我々にもたらしたかは、日本中だけではなく、もはや世界中の人が知るところだと思います」と切り出した。その上で「しかし実際には震災そのものだけでなく、そこから波及した、さまざまな問題が我々の日常を浸食していて…今回は、そのうちの生活保護という制度に焦点を当てて、撮影をさせていただきました。初めて原作を読んだ時、さまざまなことを教えられ、考えさせられました。今の日本に投げかける意義のある作品になったと思っています。受け取っていただけたら幸いです」と、切々と語った。

佐藤は劇中で、連続殺人事件の容疑者の利根泰久を演じた。笘篠誠一郎刑事を演じた阿部寛(57)との共演は、10年「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」以来11年ぶりとなる。佐藤は阿部の印象を聞かれると「阿部さんは阿部さん。11年前に初めてお会いした時から阿部さんでした」と独特の言い回しで阿部を評した。その上で「『TRICK』というドラマが本当に好きすぎて、それがきっかけで役者になりたいと思ったくらいの作品なんですね。堤幸彦監督に直談判して『TRICK』で初めてご一緒したんですけど、僕の目の前で阿部さんが演じたのを今でも鮮明に覚えているくらいのかけがえのない時間。今回、さらに深まった役柄でご一緒でき、非常にうれしい」と笑みを浮かべた。

阿部は「この(11年)間、テレビや映画を通して佐藤さんの仕事を見ていた。僕は刑事役なので、佐藤さんが演じる利根という人物を見て役を作ろうと…全て佐藤さんに委ねてやった。現場に入った時、非常に集中力、責任がある、素晴らしい俳優さんだと改めて思った」とたたえた。

「護られなかった者たちへ」は作家・中山七里氏が18年に出版した同名小説の映画化作品。東日本大震災発生からから10年目の仙台で、誰もが慕う人格者が全身を縛られたまま放置され餓死させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。別の事件で服役し、刑期を終え、出所した利根(佐藤)が捜査線上に浮かび上がり、宮城県警捜査一課の笘篠(阿部)は殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し、利根を追うが、決定的な証拠はつかめないまま第3の事件が起きようとしていた物語。撮影は20年6、7月に宮城県で行われた。佐藤と瀬々監督は17年「8年越しの花嫁 奇跡の実話」以来3年ぶりのタッグとなる。

佐藤は舞台あいさつの最後に「完成した映画を見た時、1番、胸に残ったのは命の尊さ、重さと言うより、誰かが誰かに生きていて欲しいという気持ちに心が打たれました。大切な人がいるという日常の幸せに感謝し、みんなでより良い国、生活を目指し、そのためにどうしたらいいかを考えるきっかけになる映画だと思う」と訴えた。