元乃木坂46の女優生駒里奈(25)が、「SOLO Performance ENGEKI『僕とメリーヴェルの7322個の愛』」(東京・CBGKシブゲキ!!)で一人芝居に初挑戦した。11年に乃木坂46に加入してから芸能活動10周年、グループ卒業からは3年半。1つの集大成とも言えるような表現者としてのパフォーマンスで、役者としての確固たる意識も感じさせた。

同作は、最少人数のキャストやスタッフで新たなエンターテインメントを届けるプロジェクトの一環。生駒演じる女性が宇宙を漂流し、AIの「メリーヴェル」と“愛”を探し生きていく物語を描く。「メリーヴェル」役の音声との掛け合いを軸に、時にはダンスや、アクションのような動作、長いせりふや感情をあらわに叫び続けるシーンなど、約70分間の目まぐるしいソロステージだった。

生駒は「10周年で一人芝居というのは自分でも考えていたところもあったので、本当にいいタイミングでこの作品のお話をいただきました」と感謝する。過去にも主演演台を担当した毛利亘宏氏が演出を手掛けただけに、特長が存分に表現されていた。生まれ持った天性のもの、乃木坂46で培ったもの、ソロの女優として経験したもの、全てが凝縮されたような構成だった。

乃木坂46時代から表現者として一流だった。時にあどけなく、時に格好いい、人一倍目を引くダンスパフォーマンスは、センター以外のポジションでも変わらず光っていた。多忙を極め、他にも大勢の魅力的なメンバーがそろった乃木坂46の中で、もしかしたら“アイドル”として苦しんだ部分もあったかもしれないが、7年弱やり切ったのは高いプロ意識ゆえだろう。

目まぐるしい10年間を踏まえて「今、心身共に健康な状態で板の上に立てているのが、ちゃんとお仕事として俳優をやれているなと思います」と充実の表情を見せた。今年は同作で5作目の舞台出演。先輩にあたる俳優からも「滑舌が本当に良くなった」と褒められたという。技術的にも確実に磨かれている。

10月6日に行われた同作のメディア取材で、自身の10年後について聞かれ「結婚だの、出産だの、聞かれるんですけど、今はそういうのじゃなくても楽しい、幸せな人生、っていうことも可能性としてでてきているので」と答えた。この発言が「結婚しない選択肢もある」などと取り上げられて話題となった。

もちろん口から出任せではなく、本心からの言葉ではあるのだろう。ただ、同作を観劇した方なら分かるかもしれないが、「無償の愛」という作品のテーマや、ストーリーを踏まえた上での返答でもあるのかもしれない。ステージ上での取材だったため、無意識のうちに役や作品を通して答えた可能性もある。こうした感受性の強さも、役者としての魅力の1つだろう。

ともかく「女優・生駒里奈」から引き続き目が離せない。秋田の純朴な15歳の少女が「AKB48の公式ライバルグループ」のオーディションで可能性を見いだされ、トップアイドルグループとなった乃木坂46で象徴・顔のような存在となり、10年たった今、1人の女優として確かな存在感を発揮している。並大抵の経歴ではない。

彼女を紹介する際に「元乃木坂46」という肩書が不要になるのも、時間の問題かもしれない。【横山慧】