宝塚歌劇団の星組人気スター愛月ひかるが1日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演の本拠地千秋楽を迎えてサヨナラショーに臨み、あこがれの演目にあげ続けた「うたかたの恋」を披露し、真っ白な軍服姿で魅了した。

星組公演「柳生忍法帖」「モアー・ダンディズム!」宝塚公演がこの日閉幕し、愛月は愛する本拠地に別れを告げた。

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男役15年。2歳から愛したタカラヅカのホームグラウンド最後の日。サヨナラショーで、愛月が念願をかなえた。オーストリア皇太子ルドルフの悲劇を描いた宝塚歌劇の名作のひとつ「うたかたの恋」から、名曲を星組トップ娘役舞空瞳を相手に歌い舞った。愛月が「あこがれの演目」にあげていた作品で、“最後の最後”に夢をかなえ、皇太子の軍服姿で舞空を抱えた。

りりしく、麗しい立ち姿。男役の「品」「品格」を提示し続けてきた愛月は、自身のファンからのイメージを「白」と語っていた。この日も、その軍服から着替えると、真っ白な上下で再登場。後輩のトップ礼真琴ら仲間のセンターに立ち、ショーの最後も「白」で締めた。

ショーを終え、最後のあいさつは、タカラジェンヌの正装はまか姿で大階段を下りた。同期の宙組スター芹香斗亜らから花束を受け取り、客席へ目をやった愛月は「今こうして、たくさんのお客様の前で卒業のあいさつができ、本当に幸せです」。無事に星組全員で公演を完走できたことに感謝しつつ「宝塚に出合ってから、宝塚が私のすべてでした」と、2歳で初観劇して以来、魅了された夢の世界への思いも口にした。

「こんなにも夢中になれて、自分のすべてをかけられる場所に出合えて幸せでした」。宝塚愛が強すぎるゆえ、自転車にも乗らず、買い物にも配慮し、タカラジェンヌとして、男役としての「品格」を求め続けた。それゆえ、葛藤もあった。「でも、常に宝塚が好きという思い、宝塚の男役を極めたいという思いがなければ、今の私は存在しなかった」とも吐露した。

残る東京宝塚劇場公演へ向けては「男役に完成はありません。東京公演最後の日まで、自分の男役像を作り上げて参りたい」との決意も示した。

東京宝塚劇場の退団公演は、11月20日~12月26日。愛月は、東京千秋楽をもって退団する。

◆愛月ひかる(あいづき・ひかる)8月23日、千葉県市川市生まれ。07年入団。宙組配属。10年「誰がために鐘は鳴る」から新人公演4回主演。14年「SANCTUARY」で宝塚バウホール初主演。16年「エリザベート~愛と死の輪舞~」で暗殺者ルキーニ。17年「王妃の館」でコミカルな中年男性、「神々の土地」で怪僧ラスプーチン、18年の東上初主演作「不滅の棘」で不死の男。19年2月専科へ、同11月星組。今年7月にも「マノン」で東上作主演。身長173センチ。愛称「あい」「ちゃんさん」。