ぺこぱが16日、東京・なかのZERO小ホールで開いた、初冠レギュラー番組「特命ぺこぱ~ぺこぱ貸します~」(ひかりTVとdTVチャンネルで配信。月曜午後11時)1周年大感謝祭“スペシャルコラボやっちゃいますライブ”を取材して、驚いた。開場した途端、場内に入ってくるのは、女性、女性、女性……。同ホールの客席数は507席で、我々取材陣や関係者席、その他、予備席を差し引いても400席程度はあったように思われるが、客席を目視した限り、男性の観客は2、3人。アイドルグループのライブと見まごうばかりの光景だった。

ライブの冒頭で、シュウペイ(34)が朝の番組のMCを務めるネタを披露した。「僕クラスの芸人になったらさ、朝の番組のMCなんて余裕で出来ちゃうんじゃないかな」とシュウペイが口にすると、客席の女性たちは歓声を上げた。傲慢(ごうまん)に聞こえがちなセリフも、両手を交差させて人さし指をほおに置いて「シュウペイで~す!」と言い、腰を振るシュウペイポーズが人気のシュウペイが口にすると、奔放で、かわいらしさすら感じられる。そこに「100年早いわ! って言うけど、100年後に答え合わせ出来たよって人(はいるか?)」などと切り返す、松陰寺太勇(38)のもっともな突っ込みが、また受ける。

関係者によると、ぺこぱはオンラインイベントでも女性ファンが非常に多いという。5月にオンラインで行ったアサヒビールのオンラインイベントも、女性ファンが目に見えて多く、、お悩み相談で遠距離恋愛中の悩みを吐露したのも、女性だった。ぺこぱを知る、あるお笑い関係者は「以前からルックスは女性のウケが良く、女性のファン層は非常に多いとは思っていました」と語った。

「M-1ドリームで世に出られた」と語るように、19年の「M-1グランプリ」決勝で3位に入ったことで、世の中に周知されたのは間違いないだろう。2021上半期タレント番組出演本数ランキング(ニホンモニター調べ。1月1日~6月20日)で、松陰寺は208番組で15位、シュウペイが205番組で17位と、売れに売れている。

ただ、売れなかった時代のことも決して忘れずに、鼻につかない程度にネタとして披露する。そのことも、一般のファンの目線に立ち、寄り添う優しい笑いにつながり、女性に支持される要因ではないだろうか。シュウペイは7月に都内で行われた、かんぽ生命保険のイベントで「お仕事をもらう前は、お金がなかった。歩いて帰った」と、売れなかった時代はライブ後、駅から電車に乗らず、松陰寺と一緒に歩くことも多かったと語った。

一方、松陰寺は同月に都内で開いた「GYAO!」の配信番組「ぺこぱ式○○!」合同取材会の中で、番組の企画として2人でサシで飲むことを受け、最後にサシ飲みで飲んだ10年前の席で、何を話したのか質問が飛ぶと「芸人の悪口を言う飲み会をしたのは覚えています」と振り返った。その上で、今、ウリにしている“誰も傷つけない笑い”“ポジティブな笑い”が生まれた理由を次のように語った。

「当時は自分たちが面白くなかったことを棚に上げて、そういう風にネガティブに捉えていた時期があった。その頃があったから、今はポジティブになれているのかなと思いますね」

「誰か、人に向けて投げたヤリって、必ず1周、回って自分の後頭部に刺さってくるんだな、というのを生きていく上で学んだので。それ以来、まず自分を疑うところから始めました」

“スペシャルコラボやっちゃいますライブ”後の囲み取材でも、松陰寺の発言は謙虚だった。シュウペイが冒頭のネタを踏まえ「やりたいことを口に出してきて、ウソみたいにかなってきた。ネタでもやってるし…今は昼の番組でMCをやっている。朝、やりたいな。野望を、ネタに変換するのも面白いかな」と口にした。一方、松陰寺は「今、やらせてもらってる番組を一生懸命…地に足を着けたいなと」と、堅実な姿勢を強調した。

奔放にはじける、かわいいシュウペイと、手綱を締める松陰寺…その絶妙な組み合わせと、14年の芸人人生の経験で醸成された人間性が、女性のハートをわしづかみしているのだろう。ホールの外のロビーで、肩を寄せ合って語り合い、笑みを浮かべる若~中年層の女性たちを見て、そう感じずにはいられなかった。【村上幸将】