「勧進帳」1000回を達成した松本幸四郎(66)がまた新しい冒険を始めた。江戸川乱歩の探偵小説を題材にした新作歌舞伎「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)~明智小五郎と人間豹」(3日初日、東京・国立劇場)。2日、公開げいこが行われた。

 舞台を原作の昭和初期から江戸時代に移し、幸四郎は明智役と九代琴松の名で演出を担当、市川染五郎(35)は半人半獣の殺人鬼恩田役と色男神谷役の2役。激しい和太鼓の音とともに幕が開くと、新内が流れ、江戸の世界となる。悲しい業を背負う恩田が美女を次々と殺し、明智が迫っていく。菊人形に見せ物小屋のおどろおどろしいトリックなど、飽きさせない趣向が盛りだくさん。演出も兼ねた幸四郎は「東大寺『勧進帳』の疲れもいえぬまま、けいこに入った。これをご覧にならないと、人生を損したことになりますよ」。宙乗り連発の染五郎も「僕は歩道橋でも震える高所恐怖症。いろいろな仕掛け、初めての試みもある新作歌舞伎の第1歩を見てほしい」。