東京、大阪両証券取引所の第1部に上場している吉本興業が、民放各社の参加するファンドによる同社株式の公開買い付け(TOB)を検討していることが、28日分かった。発行済みの全株式を取得し、非上場化を目指す。買い付け総額は500億円規模となる見通し。

 民放各社と広告代理店などが共同でファンドを組み、買収相手先の資産を担保に銀行などから資金調達する「レバレッジド・バイアウト(LBO)」で、株式を買い付ける。成功後に経営陣が一部出資することにより自社買収(MBO)となる可能性もある。ただ資金調達では金融機関との調整が難航しており、TOBまでには曲折もありそうだ。

 吉本興業は、お笑い中心にタレントのマネジメントなどを手掛けてきたが、インターネット関連事業や映画製作、スポーツ分野への進出など、事業領域を急速に拡大させている。非上場化で経営の自由度を高め、新規事業への投資などを実施しやすくする狙いがある。

 関係者によると、吉本はTOBで全株取得することで、確執が表面化している創業家との関係も清算し、企業イメージ向上を図る意向もあるという。

 ただ今回の計画について、吉本幹部は「ネットの隆盛でメディアは変革期にあり、新たな事業に挑戦する上で経営の自由度は重要だ」と評価する一方、「資金確保が難しいほか、実行すれば社内外に混乱を招く」と慎重な姿勢も崩していない。

 金融関係者も「資金調達が一番の問題。できなければ計画は終わり」と指摘しており、実現は流動的だ。

 吉本興業の発行済み株式は、創業家の関連会社が約9%を保有する筆頭株主となっており、TOBの実現には大株主の協力も重要になる。(共同)

 [2009年7月29日2時33分]ソーシャルブックマーク