NHKの次期経営計画(2012~14年度)の策定作業が大詰めを迎えている。焦点の受信料値下げを実施するか、施設整備など違う形で視聴者への還元とするか議論が続く。松本正之会長ら執行部は23日、経営委員会(数土文夫委員長=JFEホールディングス相談役)に経営計画の素案を提示する見込みだ。

 3年前に策定された現行の経営計画には「12年度から受信料収入の10%還元」が盛り込まれ、当時の古森重隆委員長(富士フイルムホールディングス社長)は「還元は値下げの意味」と明言。ことし4月に就任した数土委員長は「できれば値下げの形で」と発言した。

 これに対し、1月にJR東海副会長から転じた松本会長は「重要な課題と認識している」とする一方で「いろんな形の還元方法がある」と、値下げ以外の還元についても幅広く検討している。

 難題は還元の原資確保。受信料収入はここ数年堅調に増えており、10年度決算では過去最高となる6598億円だった。しかし東日本大震災を受け、11年度は50億~60億円の減収が見込まれる。

 仮に10%の値下げなら年間六百数十億円となり「恒常的に出すには膨大な額」(幹部)だ。大幅な支出削減を目指すが、ある幹部は「還元を実施するにしても6~7%程度ではないか」と話す。

 震災後、NHK内には「災害に強い放送態勢づくりが最優先課題」との声が強まっている。東京・渋谷の放送センターの耐震強化や、東京をバックアップする大阪放送局の機能強化、災害監視カメラの増設などが検討されており「災害対策も十分に視聴者への還元になる」という声も聞かれ始めた。

 経営委側にも「受信料の10%値下げでも月額100円か200円程度。視聴者はありがたいと思わないのでは」と値下げに否定的な委員もいる。