15日に発表されたNHKの3カ年経営計画に、さらなるインターネット業務の拡大が盛り込まれた。NHKは「放送と通信の融合」を加速させる考えだが、民放からは民業圧迫になるとの懸念も。受信料制度の在り方にも関わり、課題は多い。

 「節度をわきまえてほしい」。昨年11月、民放連の井上弘会長は会見で、スポーツ中継のネット同時再送信を含む「実施基準」要綱を公表したNHKをけん制した。NHKはその後の「実施基準案」でネット業務費用の上限を引き下げ、スポーツ中継の同時再送信も「試験的な提供」にとどめた。民放からの批判に大幅な譲歩を迫られた格好だ。

 今回の経営計画では、初めて「放送の同時再送信の取り組みを推進」と明記。経営委員からも「今や、ネットを無視して放送の議論はできない」との声が上がる。

 ただ、際限ない「融合」は、テレビを前提とした受信料収入の低下を招くおそれがある。ネットへの課金には放送法の改正が必要で、受信料制度の見直しも不可欠だ。

 メディア政策に詳しい中村伊知哉慶大大学院教授は「世界的に融合が進む状況へのNHKの危機感が表れた計画。放送局や政府だけでなく、もっと国民的な議論が必要だ」と指摘している。