阪神・淡路大震災から1月17日で20年。そんな震災を直接知らない女子大生の日常を通し、「神戸のいま」を描く映画「神戸在住」が17日、シネリーブル神戸、テアトル梅田、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで封切りを迎える。震災前の93年に神戸を舞台に描いた青春映画「She’s

 Rain」のメガホンもとった白羽弥仁監督(50)に話を聞いた。

 新作は昨年5月オール神戸・阪神間ロケで撮影を実施した。自身も同地で生まれ育ち、被災した地元住民ならではの視点を大切にした。「震災前から変わらない風景、キラキラした神戸の街にこだわった。震災後に変わった建物や風景は無意識に出さなかったのかもしれない」。北野、旧居留地、メリケンパーク、六甲アイランド。神戸っ子にはお馴染みの場所が次々とスクリーンに映し出される。

 原作は98年から06年まで月刊アフタヌーン(講談社)で連載された木村紺の同名漫画。物語は、神戸の大学で美術を専攻する東京出身の辰木桂(藤本泉)とその友人たちを中心に展開。ヒロインは震災前後に生まれた世代で、地震に関する直接の記憶はないが、出会い関わる周りの大人たちや友人の話からその傷跡の深さを知る。全神戸市民の4割が地震を直接知らない世代という現実のデータともリンクする。

 神戸と震災は切っても切れない関係だ。「確かに映画では震災当日の映像も出てくる。でも未来志向な、今の神戸を見て欲しい」(白羽監督)。ストーリーは震災だけを描いたものではない。等身大の神戸の日常が優しく描かれる。

 「She’s

 Rain」から一貫する視点。それは監督の神戸への優しい眼差し、そして映画の端々に登場する地元へのこだわりだろう。例えば、「She’s

 Rain」ではヒロインが神戸を去る前にグリル十字屋(中央区)で名物のタンシチューを食べ、「神戸在住」では竹下景子演じる住民が「ナダシンの餅」(灘区)のおはぎをヒロインに勧めるシーンが印象深い。神戸っ子にお馴染みのアイコンが物語を彩る。竹下が「しんどいときは甘いもんがええんよ」と語り掛けるメッセージは優しい。

 「3本映画を撮って、ようやくキャリアが追いついて来たかな」。監督が20代で撮った「She’s

 Rain」から3作目。一歩引いて登場人物の心の動きを描写するような余裕が作品から感じ取れる。そして神戸の街は美しいと再認識させられる。

 同作は開局45年を迎えた地元放送局サンテレビが制作。17日20時から同局でドラマ版もオンエアされ、劇場・地上波同時上映という珍しいスタイルをとる。脚本をはじめ撮影、照明、美術など監督が信頼する映画関係のスタッフが要所を固めた。物語に登場するイラストレーター・タナベサオリさんの絵や、ピアニスト妹尾武氏の音楽にも癒される。ドラマは東北・関東・中部・関西各エリアの独立系局など12局で順次放送予定。詳細は同局サイト(http://www.sun-tv.co.jp/kobe-zaiju)を参照。

 なお、「She’s

 Rain」も12月にブルーレイが発売となった。1月25日には神戸でリリース記念トークイベントも無料開催される。詳しくは公式サイト(http://www.mocal.com/she-s-rain/)を参照。