「誰よりも君を愛す」の作詞や、テレビドラマ「月光仮面」の原作・脚本で知られる作家川内康範(かわうち・こうはん)さんが6日午前4時50分ごろ、慢性気管支肺炎のため入院先の青森・八戸市内の病院で死去していたことが7日、分かった。88歳。北海道出身。葬儀・告別式は親族のみの密葬で行う。後日、「しのぶ会」を実施する予定。昨春には歌手森進一(60)との「おふくろさん騒動」で、世間の注目を浴びた。

 戦後の歌謡、放送史に大きな足跡を残し、昨春には「おふくろさん騒動」で世間の耳目を集めた才人が逝った。

 関係者によると、体調を崩して病院に入院したのは2月上旬。「高齢でもあり、嫌がる本人を説得して入院してもらった」という。肺炎を患い、先週末に容体が急変。そのまま、親族らに見守られながら旅だった。「君こそわが命」のディレクターだった名和治良氏(79)は急変を聞きつけて病院に駆けつけたが、間に合わなかった。「安らかなお顔でした。40年以上のお付き合いですが、優しくて気骨のある野武士のような方でした」としのんだ。八戸市内の自宅は、電気はついているが呼び鈴に応答はない。2~3年前に引っ越してきたが、近所付き合いはほとんどなかったという。

 川内さんが生涯を通して訴え続けた「無償の愛」の原型は実母だった。父が住職で、檀家(だんか)が供えたお菓子などを、母は貧しい人たちに配り歩いた。「子ども心にも人生の大切なものを教わった。あの慈悲深い姿が僕の人生の骨格になった」と述懐している。小学校卒業後、製氷工場や炭鉱で働いた後に上京。独学で文学修業を重ねて作家デビューにこぎつけた。58年には「月光仮面」が大ヒット。作詞家としても「誰よりも君を愛す」「恍惚のブルース」「君こそわが命」などを手掛け、アニメ「まんが日本昔ばなし」の監修も行った。また、昨春には「おふくろさん」に無断で冒頭歌詞を付けたとして、森進一に歌唱禁止を突きつけた。

 文芸活動だけでなく、戦没者の遺骨引き揚げなど社会活動にも尽力。80年代のグリコ・森永事件の際には、犯人に「おれが1億2000万円出すから、もう手を引け」と訴えた。歴代総理の顧問も務めるなど、常に社会正義を念頭に行動する“正義の味方”だった。