シンガー・ソングライター槙原敬之(39)と漫画家松本零士氏(70)が7日、盗作問題の裁判法廷で初めて直接対決した。「『銀河鉄道999』のセリフを無断で使用された」と槙原を非難した松本氏に対し、名誉を傷つけられたとして槙原が、2200万円の賠償や盗作の証拠提出を求めた裁判の口頭弁論が東京地裁で行われ、2人が証人出廷した。槙原は盗作を否定し、松本氏は「一言、『すまん』と言ってほしかった」と双方の主張は、平行線をたどった。

 原告席に黒いスーツの槙原、被告席にダークグリーンのスーツ姿の松本氏が座り、証言台を挟んで対峙(たいじ)した。問題になったのは槙原作詞作曲の楽曲「約束の場所」(歌はケミストリー)。歌詞は「夢は時間を裏切らない

 時間も夢を決して裏切らない」。松本氏は、同フレーズが「銀河鉄道-」の「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない」のセリフを盗作したと06年10月にメディアなどで主張。一方で07年3月に槙原が盗作した証拠提出を求める「著作権侵害不存在確認請求」の訴えを起こしていた。

 問題が起こって1年9カ月で初めて顔を合わせた2人は宣誓文を読み上げた後、まず、槙原が証言台に座った。淡々とした表情で「夢は時間~」の歌詞について「仏教の『因果応報』の教えからです」と訴えた。「自分が(覚せい剤で)事件を起こして以来、仏教を学ぶようになって。『LOTUS

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 DIRT』の『泥沼に咲くハスの花』の詩は『南無妙法蓮華経』からです。『世界に一つだけの花』は『天上天下唯我独尊』からきました」と話した。

 松本氏の代理人が「夢は『かなう』ではなく『裏切る』という嫌な言葉を使ったのはなぜですか」と問うと「あんこにお塩を入れると甘くなるように、いい言葉ばかりを並べても伝わらないんです」とキッパリ。同代理人は「素晴らしいですね」と返した。槙原は「銀河鉄道-」のセリフについては一貫して「知らなかった」と盗作を否定し、最後に松本氏を訴えた理由を「泥棒扱いされてもしていないものはしてないので。命がけでやるのもいいと考えた」と話した。

 槙原は自分の証言を終えると退席。その後、松本氏が証言台に座った。松本氏は槙原と06年10月に電話で2回、会話したことを明かし「このセリフは私の座右の銘で、自分でも長く使い、媒体でも講演会でも発表している」と主張。「偶然としても、あそこまで似てるのはありえないと思う。そう信じている。一言、公の場で『すまん』と言ってほしかった。万一、知らなくても同じものを書いてしまったら、頭を下げるのはプライドと倫理観の問題」と話した。閉廷後は「係争中だからコメントできない」とし、槙原の初対面の印象については「よくテレビで写真とか見ていたから」と話すにとどまった。両者の言い分は平行線のまま。次回法廷は8月末だが、判決まで時間がかかりそうだ。