お笑い芸人狩野英孝(26)の実家で、6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震で被災した宮城県栗原市の桜田山神社が30日、ほぼ復旧し、年末年始の参拝客を迎える準備が整った。父勉さん(55)が神主を務める同神社では、震度6強の揺れに石鳥居や灯籠(とうろう)などが次々と倒壊。参道もずたずたになったが、地元の協力を受け、なんとか復旧。県外からの参拝者も増えてきており、復興祈願には例年の倍近い参拝者が訪れる見通しだという。

 被災した桜田山神社の参道はきれいに復旧し、みぞれの中で提灯(ちょうちん)の明かりに照らされていた。勉さんは地震直後、「いつ復旧できるか見当もつかない」とぼうぜんとしたという。だが新年の復興祈願の初詣でに、ようやく間に合った。「励ましていただいたみなさんのおかげ。神主として、一日も早い復興を祈願したい」と、笑顔で話した。

 1500年の歴史のある由緒正しい神社は、栗原市内の丘陵地帯の小高い山の上にある。狩野が生まれ育った自宅は社殿の隣だ。6月14日の烈震は、狩野が子ども時代を過ごした神社を激しく揺さぶり、破壊した。神社も自宅も一部損壊の診断だったが、300年前に建立された栗駒石の本鳥居(6メートル)は根本から折れ、参道上で砕け散った。巨大な石の灯籠も倒れ、社殿も土台にヒビが入り、木造建築部分も大きなゆがみが出た。宮城県沖地震(78年)でも無事だった神社は過去にない大被害を受けた。

 被害額は、本鳥居の復旧に150万円、社殿や大鳥居などの修繕に150万円。合計300万円に上ったが、本鳥居は、地元住民の寄付で新たに奉納された。残る150万円は蓄えから捻出(ねんしゅつ)。新年の参拝を絶やしたことのない神社の歴史は地域に支えられ、守られた。

 勉さんには長男の狩野と次男の2人の息子がいる。いつかは長男に神社を継いでほしい思いはある。一方で、自分の道を進む長男の活躍を、誰よりうれしく感じている。地震後、狩野がテレビ番組で「神主の資格を取る」と宣言したが、勉さんは「資格を取るには2年間の勉強が必要。簡単ではない」としながら「実現するかは分からないが、本当にうれしかった」と、涙声になって話した。

 新たな本鳥居で迎える年末年始だが、狩野は仕事で帰省できない。それでも11月に1晩だけ帰り、栗原市の田園観光課に「どんな時でも気持ちを1つにすれば『効果テキメン、ボクイケメンで』頑張りましょう」と、狩野なりの熱い応援メッセージ入りポスターを贈って帰ったという。

 勉さんも、気持ちは狩野と同じだ。新年に向け「神社は地域のよりどころ。清き、明(あか)き、直(なお)き真心で、地域の復興に励んでいきたい」と語った。

 [2008年12月31日8時48分

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