ザ・スパイダースの元メンバーで、「太陽にほえろ!」のテーマ曲で知られるギタリスト井上堯之(たかゆき=67)が6日、健康上の理由などから引退することを所属事務所を通じて発表した。事務所関係者によると、年明けに肺気腫と診断された。入院や手術はしていないという。予定されていたコンサートはすべて中止される。

 井上の所属事務所「堯之」は、マスコミ各社に「1月1日付で、一身上の都合および、健康上の理由からプロミュージシャン活動を引退することになりました」とファクスで報告した。先月までライブやトークイベントを行っていただけに、突然の引退発表だった。

 事務所によると、年明けに健康診断を受け、4日に肺気腫と診断された。自覚症状はなく音楽活動をするのに支障はないが、今後ステージ活動が厳しくなってくる可能性は大きい。そのため、引退を決めたという。井上は1日30本以上吸うヘビースモーカーだった。

 診断から引退発表まで数日と早かったのは、音楽活動で悩んでいたことがあったからだ。精力的にライブを行っていたが、不完全感がぬぐいきれなかったという。数年間悩み続けたところへ病気が見つかり、引退を後押しする形になった。関係者は「責任感の強い人ですから、ファンには申し訳ないと思っています。ただ、このままやっても『輝けないのでは』と悩んだ結果です」と、苦渋の選択だったと説明した。

 予定されていたライブはすべて中止される。来月25日には、東京・江東区にある、500人収容の文化センターで「井上堯之バンド

 コンサート2009」を行うはずだった。すでに200枚以上チケットが売れていたが、ホール関係者も「決断は固いということでしたので」と話した。

 井上は、ザ・スパイダースのギタリストとしてグループサウンズ人気を引っ張り、「太陽にほえろ!」のテーマの演奏や「愚か者」などヒット曲を多数作曲するなど音楽界の第一線で活動してきたが、今後はギタリストだけでなく、作曲や編曲を行う予定もないという。95年に初期の胃がん手術を受けた際は「死ぬまでやりたい」と早期復帰を果たした。多くのバンドマンにあこがれられたギタリストは、納得の演奏ができなくなった今、ギターを置いた。

 [2009年1月7日10時38分

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