著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺罪に問われた音楽プロデューサー小室哲哉被告(50)は21日、大阪地裁(杉田宗久裁判長)の初公判で「おおよそ合っている」と起訴事実を認めた。検察側は小室被告が約18億円の借金返済に追われ「目先のことが大事でしょ」と犯行を主導したことを明らかにした。また、詐取した現金の一部を妻のKEIKO(36)に渡していたとし、小室被告が自らの犯行を「虚構の暴走列車」と例えた書面を提出していたことも明かした。

 検察側が小室被告の共犯者、前妻、音楽関係者らの供述調書を次々に読み上げると、同被告はそっと目を閉じた。犯行前後や当日の同被告の心情を表すコメントも明かされた。

 資金繰りが破綻(はたん)寸前に年利60%の借金をする際は、「ボクもお金、返せそうにないし、仕方ないね」。約18億円の借金に追われ、利息だけで月3000万円の借金返済が重くのしかかっても「1発当てればすべてチャラになる」。被害者に対して著作権の二重譲渡を「内緒にしておきましょう。目先のことが大事でしょう」。同被告は神妙に聞き入っていたが、時折、黒のジャケットの胸ポケットから眼鏡を取り出し、書類に目を通した。

 通常の公判では調書類は要旨しか読み上げないが、裁判員制度をにらんだとみられる裁判長の指示で、検察側は転落までの構図、犯行のほぼ全容を明らかにした。検察側は冒頭陳述で、小室被告は詐欺と知りながら犯行を進めたとした。起訴事実を認めた同被告は午後の法廷で「大きな過ちを犯し、迷惑をかけたことをおわびしたい」と謝罪を口にした。

 検察側は、小室被告が犯行を「虚構の暴走列車」と例えた書面を提出していたことも明らかにした。昨年11月に大阪拘置所でつづられたという。逮捕について「音楽のかけらもない暴走列車に急ブレーキをかけていただき、虚構の列車が止まった」とした上で「日々反省を深めている。更生の機会を与えていただけるのならば、残りの人生を音楽家として多くの人に喜んでもらえる作品を作りたい」と謝罪している。

 さらに、経済的な破綻についても、かつて一時代を築いたときにすでに「イメージした終着駅」とした。栄華を極めた時に、ジェットコースター人生のゴールは予想はできたが、回避するのは難しかったようだ。

 小室被告は初公判終了後、弁護士を通じて文書で「多くの皆さまにご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ございません。今は、ただただ深く反省しています」と謝罪。「今は公判中で何もお話しできませんが、これからは、できることなら、許されるなら、音楽一筋でありたいと思っています」と結んだ。

 [2009年1月22日8時40分

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