落語家林家いっ平(38)の林家三平襲名記念公演「日本全国感謝の会」が8日、東京・両国国技館で行われた。ビートたけし(62)舘ひろし(58)松坂慶子(56)ら、父である故三平さんにゆかりのあるゲストが祝福に駆け付け、会派を超えた落語家が集まり、6500人の観客が平成の三平誕生を祝った。前代未聞のイベントに、いっ平も「おやじはまだ生きてる」と、涙、涙だった。21日から上野の鈴本演芸場を皮切りに襲名披露興行が始まる。

 父三平さんの縁と人柄のたまものだった。まさに、めったに見られないステージの連続だった。ヒップホップで幕を開けた第1部では、多くの芸能人が祝福に駆け付けた。三平さんがファンだったという松坂は、撮影の打ち上げなどを除いて今ではほとんど歌うことがないが、肩を出したドレスで登場し「愛の水中花」を歌った。歌い終わるといっ平に「お父さんが好きだったと聞いて、本当にうれしかったんです。今日は震えずに歌えました」。休暇の予定を1日延期して出演したという。

 自宅を訪ねたり、少年時代のいっ平をバイクに乗せたこともあるという舘は、三平さんの妻でいっ平の母の海老名香葉子さん(75)の好きな「ダイアナ」と「泣かないで」を歌った。客席に降りて握手をするサービスぶりも見せた。「足が震えてました」と笑わせたが、観客からは大きな拍手が起こった。

 今回の国技館での公演のきっかけは、いっ平と貴乃花親方の親交だった。親方と歌舞伎俳優中村橋之助は「2世で次男」というつながりで登場。親方は、険悪と言われている兄でタレントの花田勝を引き合いに「私の教訓ですけど、ご兄弟は仲むつまじく」とアドバイスを送ると、場内からは大きな笑いが起こった。思わず橋之助が「触れないようにしてたのに、自分でおっしゃって」と笑った。

 ブラックジョークで楽しませたのが、たけしだった。黒紋付きに羽織はかまで登場し「金とコネだけで見事、三平を襲名した」「襲名披露興行では(春風亭)小朝に60、70%引かれるのは間違いない」「来たのは香葉子さんが50万円あげると言われたから」などと言いたい放題。たけしにしかできない、5分間の爆笑スピーチだった。

 2部の口上は、林家木久扇、三遊亭小遊三、三遊亭楽太郎、笑福亭鶴瓶、春風亭小朝、立川志の輔、春風亭昇太、柳家花緑と、会派はもちろん、東京と上方という地域を超えた落語家がずらりと並んだ。めったに見られない顔ぶれで、あらためて三平さんの人柄や偉大さがしのばれた。

 いっ平は序盤で早くも涙を見せていたが、兄正蔵に「いっぱい落語やろう、いいな」と声を掛けられ、師匠こん平の登場で顔をくしゃくしゃにさせた。終演後は「これだけのメンバーに来ていただくなんて、おやじはどっかで生きているんだと思います。もう精いっぱい駆け抜けるしかない。平成の爆笑王と言われるように頑張る」と話した。6500人の観客、豪華ゲスト、落語仲間や家族を前に平成の三平の大成を誓い、新しいスタートを切った。21日の襲名披露興行から正式に三平になる。

 [2009年3月9日8時15分

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