著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺罪に問われた音楽プロデューサー小室哲哉被告(50)の第2回公判が12日、大阪地裁(杉田宗久裁判長)で開かれ、弁護側は遅延損害金を含む約6億5000万円を被害者の投資家男性に全額弁済したことを明らかにした。小室被告の楽曲を販売してきたエイベックス・グループ・ホールディングスの松浦勝人社長(44)が出廷し、弁済資金を個人的に負担し、被告に貸し付けたと証言。同被告の再起計画も明かした。

 小室被告は黒いスーツ姿で入廷し、情状証人として出廷したエイベックス松浦社長と千葉龍平副社長(44)の証言を聞き入った。2人は転落の構図を語り、「才能」への期待を訴えた。

 初めに出廷した松浦社長は小室被告と疎遠になった理由を「傲慢(ごうまん)さがどこかで出てきて、付き合うのが難しくなった。お金が入ると人は少しずつ変わるのかと残念だった」と証言。一方で弁償費用約6億5000万円を個人的に工面し、貸し付けた理由について、被告の音楽的な才能への期待を強調した。

 昨年11月の保釈後、小室被告は「ピアノが弾きたい」と訴えたという。エイベックス所有のレストランで、朝までピアノを弾く被告の姿を見たという。「本当に音楽が好きなんだと思った。小室被告がいなければ今のエイベックスはなく、浜崎あゆみも倖田来未もEXILEもいなかった。まさに恩師だと思った」と涙声で説明した。さらに再起プランも明かし「社長直轄部署に(小室被告)ルームを用意します。刑務所に入れば社会から断絶されてしまう」と実刑回避を求めた。

 保釈後、東京都港区の高級マンションを引き払った小室被告と妻KEIKO(36)に自宅の1室を提供している千葉副社長も証言台に立った。小室被告は再起に向け、作曲活動を再開しているという。すでに数曲を作り、「新曲」を聴いたという千葉副社長は「曲はいい。今回の件で心の中でリセットが起こったのかもしれない。今は深く反省しており、再びこのようなことは起こらないと確信している」と身近で感じた心の変化を強調した。

 小室被告は閉廷後、弁護士を通じ、松浦社長らに「感謝の気持ちでいっぱいです。1日も早く音楽を通じて社会貢献に努めていきたい」とコメントした。次回4月23日の公判で結審の見通し。執行猶予付き判決の可能性もあるが、被害者側とは示談は成立していない。

 [2009年3月13日11時19分

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