約4万2000人のファンが参列したロック歌手忌野清志郎さん(享年58)の本葬儀から一夜明けた10日、清志郎さんと約40年の親交のあった泉谷しげる(61)が都内で誕生日記念ライブを行った。「あいつは死んでいない。みんなの前に絶対連れてくる」と泉谷流に故人をしのんだ。また、桑田佳祐(53)は本葬儀参列直後に生出演したラジオ番組で、ギタリスト三宅伸治(48)はライブで、不世出の天才ロッカーの早すぎる死を悼んだ。

 「いいか。清志郎のことを『死んだ』なんて言うんじゃねえぞ。年下だけど、すてきな人だし、大事なやつなんだ。みんなの前に絶対に連れて帰ってくるからな」。盟友の死。頭では分かっていても気持ちが認めない。認めたくない。急死の一報にも、「絶対信じない。だから冥福も祈らないし告別もしない」と叫んだ。その言葉通り9日の本葬儀には参列せず、この日も「やつは死んでなんかいないんだ」と何度も絶叫した。極端な恥ずかしがり屋で不器用者。ファンもそのことを分かって、べらんめぇ調の泉谷節に静かに耳を傾けた。

 この日は恒例となった誕生日(11日)のワンマンライブ。恒例でなかったのは、清志郎さんがこの世にいないことだった。約3時間かけて25曲を歌い切ったが、常に友のことが頭から離れない。9曲目の「頭上の脅威」では、歌唱前に「忌野清志郎に捧ぐ」と天に語りかけた。同曲は命について歌った作品で泉谷にとっての賛美歌なのだという。24曲目は清志郎さんが残した名曲「雨あがりの夜空に」。「あいつの歌はキーが高いから歌うのがつらいんだ」とこぼしながら絶唱。「忌野~、バカヤロー!」。潤む目を何度も右腕でぬぐった。ファン約750人もオールスタンディングと合唱で泉谷の気持ちに応えた。

 取材陣に「いつ以来の『雨あがり-』か」と聞かれると、「しょっちゅう歌っているよと言っておけ!」とスタッフに怒鳴って寂しさを見せまいとした泉谷。5日には自身のブログで「緊急特別連載-忌野清志郎・伝」をスタート。「出会ったころのことなどを書いていくつもり」と、2人がともに歩んだ歴史を記している。

 「『絶望』は目標がなくなったやつのセリフだからな。いいか。年なんて関係ない。負けるな。おれがついている!」。会場は清志郎さんや泉谷と同じ団塊の世代ばかり。喉頭(こうとう)がんになった際、のどにメスを入れなかった清志郎さんの歌への執念とファンの期待を背負い、泉谷はこれからも歌い続けていく。

 [2009年5月11日6時56分

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