日本を代表するフォークグループ、アリスが7月20日、70年代に“フォークの聖地”と呼ばれた東京・神田共立講堂で、約33年ぶりとなる一夜限りのライブを行うことが14日、分かった。外部への貸し出しを中止していた同講堂を2年越しで口説き落とした。「思い出の地でもう1度ライブをやりたい」との願いが通じた谷村新司(60)堀内孝雄(59)矢沢透(60)の3人は「やっぱりここしかない!」と声をそろえた。

 アリスは同ライブの4日後から28年ぶりの全国ツアー(40公演)をスタートさせるが、前夜祭の舞台としては最適のステージとなる。「ブレークする前のチューリップ、かぐや姫、オフコースらとアリスが競い合っていた場所。懐かしい」。3人がそう言い切るだけの理由があった。

 「共立講堂はアリスが東京から全国を制覇していくための“とりで”だった」。30年前に発売した著書「帰らざる日々」でこう記したほど思い入れが深い。東京初のリサイタルを行い、73年からの4年間で10回の舞台に立った。75年に初のヒット曲「今はもうだれも」が世に出た直後のステージは今でもまぶたに浮かぶという。楽屋にまで会場の熱気が伝わり、目の前の約2000人の熱気に圧倒された。ステージ上で初めて鳥肌が立ち、この日を境にフォーク界のチャンピオンへの階段を上り始める。

 聖地ではアリスのほか、吉田拓郎、井上陽水、甲斐バンドら、そうそうたる面々がステージに立ち、かぐや姫、グレープ、ガロが解散コンサートを行った。3人は「誰のファンとか関係なく、この客席で青春を過ごした人はものすごくいると思う。そこにいるだけで、そのころの自分を思い出すだろうし、お客さんだけじゃなく、ホールにも『ありがとう』を言いたい」と話す。収益の一部をチャリティーとして寄付しホールへの感謝の気持ちを形にする。

 今年で3人とも還暦を迎える。思い出の地に新たな歴史を刻んだ後、谷村が「年齢を考えると命を削るようになる」と闘争心を燃やす全国ツアーに向かう。そこには「それぞれの秋」を迎えつつある団塊世代の仲間たちが待っている。

 [2009年6月15日8時43分

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