元アイドルの歌手柏原芳恵(44)が演歌に初挑戦している。6月1日にデビュー30周年を迎え、このほど記念アルバムとして「男演歌

 魂(こころ)・愛の13話」を発売した。「ファンに聞いてもらえれば」と大掛かりな宣伝はしていないが、男性演歌のカバーアルバムで森進一、吉幾三、フランク永井、五木ひろしらの名曲を歌う“柏原演歌”に、放送関係者も注目し始めている。

 80年代、柏原は松田聖子、河合奈保子ら同期と女性アイドル全盛期をけん引した。演歌はミスマッチに思えるが、柏原の“遊び心”として実現したのが、13曲収録の「男演歌

 魂・愛の13話」だ。

 伏線は07年発表のアルバム「encore~アンコール」で、河島英五、小田和正、谷村新司、長渕剛、井上陽水ら男性アーティストの名曲をカバーした。今回は第2弾で、実は「encore2」がメーンタイトル。もともと、歌唱力には定評があり、前作発売後「30周年記念は男性演歌のカバーで」というスタッフの提案に、「いい意味でファンを裏切りたい」と、初の演歌挑戦を決めた。

 「夢とほほえみ

 遊び心」をモットーに構想から3年。大変な作業だった。柏原は「誰の、どの曲をカバーするか。例えば森進一さんには多数のヒット曲があります。行ったことのなかったカラオケ店に計十数時間こもり、歌手の全曲を聞いて選曲しました」と振り返った。

 「演歌は1話1話が物語。男と女の愛の魂の13話を選びたい」とこだわり、13曲に、すべて「男」と「女」が登場する。「マネではいけない」と、全曲、柏原風にアレンジも変えた。アルバムの1曲目「prologue」はオルゴール音で、「オルゴールのふたを開けて、芳恵の不思議な世界にようこそ」と演出した。柏原は「13話を続けて聞いてほしい。選曲、曲順、アレンジなどすべてに思いを込めています」。大手レコード会社からの発売ではなく「ファンに聞いてもらえれば」と大宣伝はしていない。「13話で1作品」の意図から、ライブで歌う意向はないが、テレビ局から最近、「演歌も歌ってほしい」と依頼されるなど、徐々に注目されている。

 30周年に「当初はレールの上を頑張って走っていました。今は楽しんで仕事しています」。そんな柏原芳恵の新しい魅力が詰まったアルバムだ。【笹森文彦】

 [2010年7月4日9時52分

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