戦場カメラマンをスポーツカメラマンが撮る、という珍しい場面に立ち会った。スローな語り口で人気の戦場カメラマン渡部陽一さんを、日刊スポーツ宮川勝也カメラマンが撮影した。カメラマン同士、どんな撮影になるのかと見ていたら、2人ともどこかぎこちない。渡部さんも本来は撮る側の人。宮川も普段は野球などのスポーツを撮ることが多く「同業者にレンズを向けるのは、なんか照れる」と笑った。

 お互いのカメラに目が向くのはカメラマン共通の習性。渡部さんは宮川のニコンD3Sを瞬時に見抜き「最強のカメラですね」。弊社写真部の支給品だが、レンズなしの本体だけで50万円はする報道カメラの最高級品だと解説し「普通はちょっと手が出ません」。そんな渡部氏は、8年愛用のキヤノンEOSマーク2。これもキヤノンの当時のフラッグシップ機。ロゴが光り兵士を刺激しないよう、ボディーを黒テープでぐるぐる巻き。多くの傷が戦場の過酷さを感じさせ、宮川も「ボロボロですね」と敬意を表した。

 「何の分野だろうと、同じカメラマンだなあ」と実感したのは、カメラを片付ける姿。カメラマンって、なぜか必ず隅っこでカメラバッグを黙々と片付ける。同じ習性が染み付いている2人の姿がほほ笑ましく、その一瞬を押さえてみました。【梅田恵子】

 [2010年10月29日12時25分

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