歌舞伎俳優市川海老蔵(32)が顔などを殴られ大けがを負った事件で、海老蔵が加害者の男らに挑発的行為をしていたことが11月30日、分かった。警視庁は海老蔵を殴ったとして傷害容疑で26歳の男の逮捕状を取っているが、捜査関係者によると、海老蔵は男の仲間で元暴走族リーダーの頭に酒をかけ、仲間たちに灰皿にテキーラを入れて飲ませようとしたという。この状況を受け、「海老蔵を謹慎にすべき」の声が出てくることは必至。来年1月「初春花形歌舞伎」座頭公演に影響する可能性も出てきた。

 海老蔵はトラブルの原因を自分でつくった可能性が高くなった。海老蔵は24日午後11時から東京・西麻布で歌舞伎関係者と飲み始め、25日午前0時半に1人で別の店に移り、知人の暴走族出身で不良グループのリーダーやその後輩格で逮捕状を取られた26歳の男など数人と酒を飲んだ。何軒か店をはしごした後、雑居ビル11階の会員制飲食店で飲んでいた際にトラブルが起きたという。

 酒に酔って泥酔状態になった海老蔵はリーダーの髪を引っ張ったり、頭に酒をかけるなどしたという。さらにグループのメンバーに灰皿にアルコール濃度の高い「テキーラ」を入れて飲むように強要したという。リーダーが吐き始めると、仲間たちを「お前らがしっかりしないからだ。てめえらが先輩の面倒を見るのが筋だろ」と罵倒。その言葉に激怒した男が外階段に連れ出し、殴る、蹴るの暴行をしたという。これまで海老蔵は警視庁の調べに「男を介抱していたら別の男にいきなり殴られ、後頭部を蹴られた。逃げるのに精いっぱいだった」と話していた。

 現場ビルの外階段には2階から11階にかけて血痕が残り、警視庁がDNA鑑定を行った結果、海老蔵のものと一致した。警視庁は海老蔵が11階で殴られた後、外階段を使って逃げたとみて、この日午後、11階の飲食店や階段を中心に現場検証を行い当時の状況を調べている。

 海老蔵の左頬陥没骨折、鼻の腫れなど顔面の大けがを整復する手術は29日、顔にメスを入れない形で行われ、2時間ほどで終わった。この日は食事に流動食も出たという。団十郎も「手術は無事に終わり(海老蔵も)元気にしている」と話している。術後10日間の入院は必要だが、来年1月の「初春花形歌舞伎」(東京・銀座のル・テアトル銀座)座頭公演は「勧進帳」など一部の演目変更で海老蔵も出演して出来そうな状況になってきた。興行を制作する松竹は一両日中に海老蔵や主治医と会って、公演開催について最終決定する。

 しかし、殴られた原因などが明らかになるにつれ、海老蔵の立場は悪くなっている。一方的に殴られた被害者ではなく、トラブルの原因をつくった可能性が出てきて、事態は変わってくるからだ。元暴走族の不良グループのリーダーを「知人」と話すなど、交友関係も問題となりそうだ。連日マスコミに大きく報じられるなど世間を騒がせた社会的責任などを重視した場合、海老蔵に対して「出演は控えるべき」などと「謹慎」の処分を科す意見も出ることは必至だ。そうなれば、1月の公演に影響する可能性が出てくる。海老蔵にとって、けが以上に頭を悩ませる状況が続きそうだ。

 [2010年12月1日9時20分

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