大津波の被害に遭った岩手県陸前高田市出身の俳優村上弘明(54)の両親、父金一さん(82)と母せつ子さん(78)の無事が15日、確認された。2人は、同市広田海岸から約1キロ離れた高台(地上約20メートル)にある同市立広田小に避難していた。地震直後から村上と連絡が取れなかったが、この日、日刊スポーツの取材に応じた2人が「自宅は壊れちゃったけど、元気だよ」と声をそろえた。

 中心街から同地区までの道は、前日14日に開通した。それまでの3日間は同地区に物資も届かず孤立状態だった。2階建ての自宅は海岸から約500メートル離れた高台(地上約10メートル)にある。海岸には約9メートルの堤防もあるが、津波は軽々と超えた。「悪魔だよ。地震が起きた時、スーパーにいたけど、出るのに15分ぐらいかかった。街中の道路が避難する車であふれ返っていてパニックだった」と金一さん。自宅に戻ると、玄関前には車3台が重なり合い、1階の天井辺りまで水没した跡があった。「命拾いした。ただ、弟(村上の叔父)夫婦の行方が分からない。つらいね」。笑顔は最後まで見られなかった。

 両親の無事の知らせを受け、村上は安堵(あんど)したという。一方で、所属事務所関係者に「行方が分からない親戚もいます。手放しでは喜べません」と話したという。【峯岸佑樹】