音楽家長渕剛(54)が3日、東日本大震災への激しい怒りと再起への決意を込めた散文詩「復興」を発表した。「憎い

 憎い」で始まる1055文字の長編で、尊い命やふるさとを奪った津波を呪うも、ひるまない人間の絆と強さを表現した。長渕はこの日、被害の大きかった岩手、宮城、福島など6県へ向けた被災地限定ラジオ番組を制作し、7日から放送を開始することも発表した。

 一気に書き上げた。言葉があふれ出た。長渕は散文詩を書いた理由を「自分のことだから」と言う。対岸の火事ではない。だから、この詞が生まれた。

 3月11日、長渕は都内の事務所で打ち合わせ中に大きな揺れを感じた。スタッフの安全を確認し、すぐに非常階段で避難。駐車場で空やビル、揺れ続ける電線を見上げ、動けない自分に無力を感じた。情報が欲しくてテレビに見入った。「歌手なのに、歌っている場合じゃないと思った。同じ悲しみを共有したいと思った」。

 しばらくして「怒り」がこみ上げてきた。地震や津波の天災だけにではない。一部で人災とも批判される原発事故でも、被災地の人々は耐え続けている。だが、政治家もテレビに出る知識人も「今、私たちのできることは…」と、普通の言葉で話す。長渕は「なぜ抑えながら話すのか。絵空事ではない怒りや恐怖や、思いをぶちまけろ」と思った。

 そして「復興」の散文詩は生まれた。「俺みたいな人間がしゃしゃり出て不謹慎かもしれないが、近々、被災地に行きたいと思っている。そして、立ち上がる人々と共にいたい。必ず、行くから」と誓った。【笹森文彦】