俳優田中実さん(44)が25日午後、東京・大田区の自宅マンションで死亡していたことが26日、分かった。首をつっており、警視庁池上署では自殺の可能性が高いとみて調べている。田中さんはNHK連続テレビ小説に主演するなど、多くのドラマや映画で活躍。所属事務所や家族も最近、目立った異変や悩みを感じたことはなかったといい、原因は不明。ただ約2週間前、自身のブログに、何かに悩んでいるようにも思える日記を書いていた。

 池上署や所属事務所オスカープロモーションなどによると、田中さんは25日午後3時すぎ、東京・大田区のマンション4階の自室で、窓の格子にかけたマフラーで首をつり、床に座るような姿勢でいるのを母親とマネジャーに発見された。

 すでに意識不明で心肺停止状態だったがマネジャーが人工呼吸をし、母親が119番通報。母親と、仕事先から駆け付けた妻が救急車に同乗し、近くの病院に運ばれたが午後4時20分、死亡が確認された。同署は事件性はないとみており、死因は調査中。遺書は見つかっていないが、自殺の可能性が高いとみられる。

 オスカープロは26日夜、都内の同社で会見。幹部によると、田中さんは当日、午前11時半から都内でドラマ撮影があったが、来なかったという。「必ず30分以上早く現場に入る人」で遅刻は初めて。マネジャーが「おかしい」と本人に電話したが、出なかった。

 マネジャーは自宅に向かいつつ、妻に電話。妻は近くに住む母親に連絡した。マネジャーと母親は同時に自宅に着き中に入ったところ、部屋着姿で首をつっている田中さんを見つけた。

 田中さんは妻、高校生の長男、中学生の長女と4人暮らし。この日は妻が朝、仕事に出掛けた後、自宅内で1人だったとみられる。ただ、24日までに電話でマネジャーと仕事の時間を確認しており、幹部は「奥さんにも『今日は仕事』と言っていたし、我々もマネジャーも一切、異変を感じていなかった」と話した。

 田中さんは85年、俳優仲代達矢(78)主宰の俳優養成所「無名塾」入塾。90年にはNHKの連続テレビ小説「凛凛(りんりん)と」で主演を務め、多数のドラマ、映画などに出演する個性派役者だった。

 今年1月からオスカープロに移籍。今月20日には本社で若手俳優らの講師として、社屋全体に響くほどの大声でレッスンをつけるなど、元気な様子だった。最近はテレビ朝日系のドラマの撮影が始まったばかりだった。幹部は「役者としての幅を広げたいとうちに来た。真面目で向上心もあり、悩みも感じられなかった。とにかく驚いている」と話した。

 半年先までドラマの仕事が数本決まっていた。今月18日放送のTBS系ドラマ「湯けむりバスツアー」が生前最後の番組となった。家族の希望により、近親者のみの密葬にするという。

 ◆田中実(たなか・みのる)1966年(昭41)10月27日、東京生まれ。無名塾に入塾し、90年にNHK連続テレビ小説「凛凛と」に主演。その後「刑事貴族」「八丁堀捕物ばなし」「温泉へ行こう」などにレギュラー出演し、2時間ドラマの常連だった。映画も「月光の夏」「出口のない海」などに出演。舞台は無名塾公演「ハロルドとモード」「剣客商売」、CMも高田純次と共演した「グロンサン」などがある。