タレント萩本欽一(70)が6日、30年以上前にフジテレビ系「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に出演していた“気仙沼ちゃん”こと白幡美千子さん(56)と、仙台市で再会した。無事は知っていたが、東日本大震災後に会うのは初めて。白幡さんの変わらぬ笑顔に触れ、「ホッとした」と話した。萩本は、三重県名産の陶磁器「万古焼(ばんこやき)」で作った食器などを手渡し、白幡さんは1年後をめどに家族で経営する旅館の営業を再開させ、萩本と再会することを誓った。

 欽ちゃんを部屋で待つこと約10分。緊張で顔をこわばらせていた白幡さんを見るなり、欽ちゃんは握手を求め、その手を何度も高く掲げた。「良かった良かった。もっとションボリしていて、会ったら『うれしいっ』と泣くかと思ったけど、たくましくてホッとしたよ」。緊張の解けた白幡さんの変わらぬ笑顔に、欽ちゃんも目尻を下げ、目を潤ませた。

 約2年ぶりで、震災後は初めての再会を果たすきっかけは、旧知の野球評論家鹿取義隆氏(54)からの1本の電話だった。仙台在住の共通の知人と飲んだ勢いで欽ちゃんに電話。「仮設住宅では笑顔と食器が不足しています。津波で全てを流されて、いまだに紙皿、紙コップを使っている人が多いんです」と訴えた。三重県観光大使の欽ちゃんは、すぐに万古焼の土鍋、急須、皿、湯飲みなどを贈ることを決意した。被災者へのメッセージを書いた手ぬぐいと鈴鹿市のお茶葉を3トントラックに乗せてこの日、仙台にやってきた。「どこに持って行こうかと考えて、一番分かりやすい気仙沼ちゃんのところに決めたの。これをきっかけに三重を知ってね」。

 白幡さんも欽ちゃんの思いを受け止めて言った。「はい。早速、地図で調べます。今は休業している旅館が再開したら土鍋料理も始めるし、お茶葉も静岡産から3分の1は鈴鹿産にします」。2人が知り合った「欽ドン」で見せた爆笑トークが続いた。

 欽ちゃんは当初、白幡さんの住む気仙沼湾に浮く宮城県気仙沼市の大島に一緒にサプライズで乗り込むつもりだったという。「何のトラックが来たのか分からなくてビックリ。で、自分が出てきてさらにビックリってね」。だが、白幡さんの「欽ちゃんに大島で会うのはまだ早い。被災した旅館を改装して、島も復興し、自分も人間的にもっと成長してからじゃないと」という思いを風の便りに聞いて断念したという。

 しかし、欽ちゃんは白幡さんにさらなる元気と目標をもたらしていた。「1年後には旅館の営業を再開させて、欽ちゃんにまた会いたいです」。海の幸と万古焼の鍋で欽ちゃんをもてなす日に向け、白幡さんは日々を懸命に生きる覚悟だ。【松本久】