ロンドン五輪マラソン出場を目指していたお笑いタレント猫ひろし(34)が、9日までにカンボジア国籍を取得していたことが分かった。9日、所属事務所が発表した。かねて同国代表選手として出場を目指しており、必要条件の1つをクリア。晴れてカンボジア人となった猫は、同国代表の選考レースとなる16日の東南アジア競技大会(インドネシア・パレンバン)に出場し悲願達成に挑む。同レース中のカンボジア人で1位が切符獲得の条件。フルマラソン2時間37分49秒の自己ベストを持つ芸能界屈指の健脚だが、「負ければ、ただのカンボジア芸人」と背水の陣で臨む。
猫は本気だった。所属する劇団「ワハハ本舗」関係者ですら「まさか、現実になるなんて」と驚くカンボジア国籍取得。芸人魂という言葉では片づけられない事態に発展してきた。この日を見据え、カンボジアで走り込みを続けてきた猫は「無事、国籍が取れました。カンボジア代表選手として東南アジア大会に出場します。がんばりますので、応援よろしくお願いします。『猫ひろし』改め『チュマール(カンボジア語で猫)ひろし』でした」とコメントを発表した。1カ月前からカンボジアに入って合宿を開始。8日にインドネシアに移動したという。
中学、高校と卓球部だったが、芸人になってからマラソンに目覚めた。テレビ特別番組の企画で長距離走に挑戦し、意外な健脚が話題になった。一発ギャグ「ニャー」でお茶の間の人気者になったが、マラソンで浴びた注目がそれ以上に気持ち良かったのか。はたまたアスリート魂に火が付いたのか、国内外のレースに次々と参加。好記録連発に五輪出場を意識するようになった。芸能界きっての健脚とはいえ、日本代表としての出場は記録的にはもちろん無理。最近でも先月30日の大阪マラソンでお笑いタレント宇野けんたろう(29)が、猫の自己ベストを上回る2時間37分43秒を記録。芸能界最速というわけでもないのだ。現実を知る猫が狙いを定めたのは、国籍取得というウルトラCを使ったカンボジアからの出場だった。
カンボジアの選手層は薄い。昨年12月のアンコールワット国際ハーフマラソンで3位に入賞。カンボジアオリンピック委員会から「選手団入りを歓迎する。一緒に練習しましょう」と“勧誘”され、仰天プランが現実味を帯びた。今年6月、プノンペン国際ハーフマラソンでは2位に。今度はカンボジア観光省トン・コン大臣から国籍取得の推薦状を得て申請手続きに入り、同時に五輪マラソンを目指すと正式表明した。
カンボジア国内の学校や児童養護施設の訪問などボランティア活動も積極的に行ってきた。関係者は「日本人がカンボジア国籍を取得するのは、ほぼ100%婚姻。猫さんは、まさに特例」と話した。
カンボジア人になれたが道は険しい。選考レースは16日の東南アジア競技会1度きり。各国ランナーが出場する中、カンボジア人で1位になることが条件だ。最有力といわれるヘム・ブンティ(26)の自己ベストは、猫より11分早い2時間26分。アンコールワット国際、プノンペン国際で連敗中の強敵だ。
猫は「負けたら、ただのカンボジア芸人。(外国人タレントを多く抱える)稲川素子事務所に移籍しようかな」と芸人ならではの覚悟も決めている。常識外れの執念で、五輪への扉をこじ開けることができるか。
◆猫ひろし
本名・滝崎邦明。1977年(昭52)8月8日、千葉県市原市生まれ。目白大人文学部卒。03年に芸能界デビュー。「ニャ~」のあいさつなどをネタに人気者になる。11年の東京マラソンで2時間37分49秒の自己ベスト記録をマーク。真夜中の40キロ走や10キロの荷物を背負っての帰宅ランなど独自のトレーニング法を明かした「猫ひろしのマラソン最速メソッド
市民ランナーのサブスリー達成術」(ソフトバンク新書)を21日に発売する。妻と1女。147センチ、血液型A。
◆カンボジア王国
インドシナ半島に位置し、タイ、ベトナム、ラオスと国境を接する。首都はプノンペン。面積18・1万平方キロは日本の約2分の1で、人口約1340万人。言語はカンボジア(クメール)語。基幹産業は農業だが、世界遺産「アンコールワット」に代表される遺跡群観光や縫製、製靴などの製造業が成長分野。通貨はリエル。熱帯モンスーン気候に属し、年平均気温約28度。日本との時差はマイナス2時間。元首はノロドム・シハモニ国王。
◆東南アジア競技大会
東南アジアスポーツ連盟主催の総合競技大会。第1回は1959年にタイ・バンコクで行われ、タイ、マレーシア、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミャンマーの6カ国が参加。今年は44競技に11カ国。頭文字を取ってシーゲームと略される。




