歌舞伎俳優中村勘三郎(56)が昨年の闘病中、医師から引退勧告を受けていたことを明かした。東京・浅草の平成中村座4月、5月公演の取材で「『指導者に回った方がいい』と言うので、医者を代えた。今、出られるのはありがたい。おれには歌舞伎しかないもの」と話した。

 「特発性両側性感音難聴」で昨年1月に入院、7月に舞台復帰。現在の体調は「いい時の7割5分。でもエネルギーは変わらない」。まだ耳鳴りはするが「支障はない。働き過ぎで極限までいったから、前のような出ずっぱりはやめる」。

 4月は「法界坊」、5月は初役で「め組の喧嘩(けんか)」の辰五郎、「髪結新三」に主演するが、先日、貴重な資料が見つかった。6代目尾上菊五郎の長女だった母が最古参弟子の中村小山三に預けた、5代目と6代目の菊五郎のさまざまな演目についての覚書だった。「『め組』『髪結』の資料もあって、心強い味方です」。「め組の喧嘩」はトビと力士のけんかが舞台だけに「5月場所はみんなで見に行って、平成中村座で懸賞を出そうと思ってます」。

 再来年は新作、海外公演も計画する。「やりたいものが増えてきた。病気は嫌だけど、いい休養になったし、無駄ではなかった。60歳の還暦には平成中村座で『助六』をやりたいね」。