歌手で俳優の安岡力也さんが8日午前6時1分、都内の病院で心不全のため死去した。64歳だった。02年以降は度重なる病魔に襲われ、長い闘病生活を送っていた。

 安岡さんの人生は異色だった。

 イタリアのジェノバで生まれた。父親はマフィアの有力者で、銃撃などを何度も見て育ったという。6歳の時に父が死亡して帰国。高校時代は4000人を率いる総番長だった。「校内暴力をする人間は陰湿で弱い人間。先生を殴るなんてもってのほか。俺は番長としかケンカしなかった」。

 内田裕也らにあこがれ、「もてたい」と高校在学中にグループサウンズ「シャープホークス」を結成、リードボーカルとして活躍した。屈強な体を生かしキックボクシングや映画界に進出したが、共演者に蹴りを入れるなど傷害事件を起こし、ほされた時期も。建設会社の現場監督、内田の事務所で経理マンを経て、兄貴と慕う梅宮辰夫の「不良番長シリーズ」などで芸能界に復帰。悪役に加え、義理人情に厚い役どころで存在感を見せた。

 「ホタテマン」では、子供が駆け寄り、母親から「体が弱い子なので触らせて」と懇願されるヒーローになった。「長年ワルをやってきて子供のアイドルになるとは…」。

 全盛期は1日ビール20本、ボトル4本を空ける酒豪で、愛人は数十人と豪語したが、長男のために離婚した妻と「復縁したい」と語ったこともあった。