5月29日に老衰で亡くなった新藤兼人監督(享年100)の次男で近代映画協会社長の新藤次郎氏(63)が31日、都内で会見を行い、代表作「裸の島」を撮影した広島県三原市の宿祢(すくね)島に散骨する意向を示した。同作に主演し、94年に亡くなった妻で女優乙羽信子さんの遺骨の半分が同島にまかれている。

 「裸の島」は60年に撮影、公開された。翌年にはモスクワ映画祭でグランプリを取るなど、国内外で高く評価され、乙羽さんにとっても代表作の1つになった。同島での散骨について聞かれた次郎氏は「それも考えています」と話した。新藤監督と乙羽さんは、映画を撮った思い出の地、宿祢島で眠ることになる。京都市には乙羽さんの墓もあるが、次郎氏が作った墓に納骨するとした。

 また、次郎氏は新藤監督の亡くなった時の様子について語った。みとることはできなかったが、苦しむことなく穏やかな顔をしていたという。また、亡くなる前日まで映画にまつわる寝言を言っていたことも明かした。

 「どうやら(夢では)アメリカで撮影していたようで、『英語と日本語で撮るよ』と寝言を言っていました。この先も映画のことばかりを考えているんじゃないか。お疲れさまと言いたい」

 6年間一緒に暮らし、最期をみとった孫の新藤風監督について、次郎氏は「喪失感が強く、まだ話せる状態ではない」とした。2日に東京都港区の増上寺光摂殿で通夜、3日に同所で葬儀・告別式が行われる。

 ◆宿祢島

 瀬戸内海の芸予諸島のうちの佐木島沖合いにある無人島。周囲約600メートルの島で、「裸の島」では、夫婦が斜面に作られた畑に毎日水をまく光景が撮影された。新藤監督は03年に、同島がある三原市の名誉市民になった。