バルセロナ、アトランタ五輪女子マラソンのメダリスト、有森裕子さん(45)が米国人の夫ガブリエル・ウィルソンさん(46)と昨年7月に離婚していたことが25日、分かった。98年に結婚したが、程なくガブリエルさんの金銭トラブルが続々と発覚。さらにガブリエルさんが「私はゲイだった」と告白し、周囲は離婚を勧めた。それでも結婚生活を続けた2人だったが、数年前から生活の拠点が日米に分かれ、ついに破局を迎えた。

 有森さんはこの日夜、マスコミ各社に直筆署名入りの書面をファクスで送り、離婚を発表した。「ガブリエル・ウィルソンと私、有森裕子は昨年7月に離婚いたしました。これは2人で何度も話し合い、いろいろ悩んだ上で出した結論です」と円満離婚を強調した。

 数年前から、有森さんは活動の拠点を日本に置いている。一方、ガブリエルさんは米コロラド州ボルダーに住んでいる。所属事務所によると、有森さんは年に数回、夫が住むボルダーを訪れる程度で、別居生活が続いていたという。物理的な距離も、すれ違いに拍車をかけたとみられる。

 2人の出会いは97年だった。有森さんが語学留学でボルダーに滞在中にガブリエルさんと知り合い、交際に発展した。翌98年1月に身内だけで挙式したが、翌月にはガブリエルさんが結婚前に日本で暮らしていた頃の悪質な家賃滞納や借金踏み倒しなど、次々と金銭トラブルが発覚。経歴詐称疑惑も報じられた。

 これらを釈明するために同月19日、2人はそろってボルダー市内で会見した。ガブリエルさんは金銭トラブルを認めた上で「I

 was

 gay(私はゲイだった)」と衝撃告白した。相次ぐスキャンダルに、同月末に東京で予定していた結婚披露宴をキャンセル。2人は冷却期間を置くため、別居に踏み切った。

 この会見にショックを受けた父は取材陣の前で涙を流し、周囲も離婚を勧めていた。しかし、別居から約1年後の99年、有森さんが出場したレースにガブリエルさんが同行。かいがいしく有森さんの世話を焼き、表彰式でも有森さんに寄り添った。有森さんも喜び、「将来は一緒に住みたい」と復縁を明かした。03年に発表した著書「わたし革命」では「彼には弱さも暗さもある。弱さの一つの現れが金銭感覚だ」「ガブリエルにひかれたのは、彼の暗さに私の暗さが反応したからだ」と、ガブリエルさんへの理解を示していた。

 最後に取材陣の前に2人で現れたのは07年の東京マラソンで、有森さんの競技生活最後のレースだった。その前後まで、有森さんのブログでは夫が写った写真もアップしていた。数年前から徐々に2人の溝が深まったとみられる。

 有森さんはNPO法人の仕事に従事するほか、昨年には母校の日体大客員教授に就任した。多忙な日々を送る中、夫と話し合いを続けていたが、所属事務所関係者は「離婚が成立するまでプライベートなことで相談はありませんでした」と振り返る。離婚報告の書面でも「これからもさまざまなことに挑戦し、仕事を頑張っていきたいと思っています」とつづった。有森さんは既に前を見つめ、第2の人生を走り出している。

 ◆有森裕子(ありもり・ゆうこ)1966年(昭41)12月17日、岡山市生まれ。就実高、日体大を経て、89年リクルート入社。90年大阪国際で初マラソン日本最高(当時)の2時間32分51秒をマーク。92年バルセロナ五輪女子マラソンで銀。96年アトランタ五輪で銅メダル獲得した後には「自分で自分を褒めたいと思います」と名言を残した。同年末にプロ宣言。99年のボストンマラソンでは2時間26分39秒の自己ベスト。07年に競技を引退。現在は日体大客員教授や日本陸連女性委員会委員などを務める。164・5センチ。