「恋のバカンス」や「恋のフーガ」などのヒット曲で知られる双子デュオ、ザ・ピーナッツの姉、伊藤エミ(いとう・えみ)さん(本名・沢田日出代=さわだ・ひでよ)が15日に死去していたことが27日、分かった。71歳だった。一卵性双生児の妹ユミさん(71)と59年にデビュー。人気番組「シャボン玉ホリデー」のメーン司会や、姉妹で妖精役で出演した映画「モスラ」でも人気を集めた。75年に引退して歌手沢田研二(64)と結婚したが、87年に離婚。引退後はほとんど公の場に姿を見せなかった。

 エミさんは昨年末、妹ユミさんと、公私にわたって親しかった中尾ミエ(66)がレコーディングを行っていた都内のスタジオを訪れるなど元気だった。関係者によると、今年春になって転倒が原因で腰などを強く打ってしまった。なかなか治らないため、精密検査を受けたところ、がんが見つかった。がんはかなり進行しており、入院生活を続けたが、判明から1カ月ほどで亡くなった。最期は妹ら家族にみとられた。実母が昨年亡くなったばかりだった。

 葬儀は既に近親者で営まれた。芸能界引退後、87年2月に育ての親、渡辺プロダクション社長の渡辺晋氏の葬儀に参列して以降、公の場に出ることはほとんどなかった。関係者も突然の訃報に驚いた。

 エミさんは、妹ユミさんと小学校のころから名古屋市内の合唱団に参加し歌手を目指した。59年にザ・ピーナッツとして「可愛い花」でデビュー。音楽家の故宮川泰氏に歌唱指導を受け、「恋のフーガ」「恋のバカンス」など大ヒット曲を連発。ユミさんがメロディー、エミさんがハーモニーの歌唱は一卵性双生児ならではの美しさで聴く者の心をとらえた。

 高度成長期に一世を風靡(ふうび)した。テレビ創生期とも重なり、国民的な人気を獲得したアイドルだった。ハナ肇とクレージーキャッツらも出演した日本テレビ系の音楽バラエティー「シャボン玉ホリデー」の司会に抜てきされ、2人そろってコントも披露。テレビを囲んでの一家だんらんが定着した中で一躍、人気者になった。女優としても映画「モスラ」に姉妹で妖精の小美人役で登場。「モスラや、モスラ~」と歌う「モスラの歌」は、老若男女が口ずさむほど大ヒットした。

 75年に歌手生活16年で引退する際、エミさんは「惜しまれる時にやめたかった」と話した。その年、沢田研二と結婚したが、87年に離婚。以後は東京・世田谷区内の自宅で、息子とユミさんと3人で静かに暮らしていたという。昭和という輝かしい時代を駆け抜け、静かに逝った。

 ◆伊藤(いとう)エミ

 本名・沢田日出代。1941年(昭16)4月1日、名古屋市生まれ。高校1年で故渡辺晋氏にスカウトされ、双子の妹ユミと結成したザ・ピーナッツとして、59年「可愛い花」でデビュー。「恋のバカンス」「ウナ・セラ・ディ東京」「恋のフーガ」などヒット曲を連発。人気番組「シャボン玉ホリデー」や映画「モスラ」などに出演。59年から16回連続でNHK紅白歌合戦に出場も、75年4月に引退。同年6月4日に7年間の交際を経て沢田研二と結婚。79年3月に長男誕生も87年1月に結婚12年で離婚。