【ニューヨーク=広部玄】女優米倉涼子(36)が主演のミュージカル「CHICAGO」が10日(日本時間11日)、ニューヨークのアンバサダー劇場で初上演された。日本人女優がブロードウェー・ミュージカルで主演するのは54年ぶりで、米倉は猛練習した英語で全編を演じ切り、世界一目の肥えた観客を魅了した。終演後にはスタンディングオベーションを受け、感激と感謝の涙を流した。

 ダイナミックかつセクシーに、米倉がステージを動き回った。腰がうねるように動かす官能的なダンスを披露。特訓を重ねた流ちょうな英語で歌い、客席を沸かせた。カーテンコールでは満員約1100人の観客が総立ちになり、拍手を送った。

 米倉が演じたのは、愛人を殺害した女ロキシー・ハート。終演時、ステージ上で共演女優アムラ・フェイ・ライトからねぎらわれると、感極まって涙をこぼした。そして観客に伝わるように、支えてくれた母親への思いを口にした。

 「サンキュー・マイ・ディア・マザー」

 終演後、会見した米倉は「今まで生きてきて一番緊張した」と興奮気味に振り返った。演出上使った一部の日本語をのぞいて、すべて英語。「(英語では)みなさんには伝わらないほどの苦労をしました」とこぼした。一方で「でも、(苦労は)生きてる証しだな、と思った。まだまだこれからですけどね」と笑顔で前を見つめた。

 日本人女優がブロードウェーで、アジア系以外の役を演じるのは初。主演するのは、1958年にナンシー梅木さんが中国人役で主演して以来だ。しかし、米倉は気負わずに口元を引き締めた。「記念日なのかもしれないけど、今日で終わりじゃないですから」。

 真剣勝負だった。08、10年、日本で日本語版「CHICAGO」に主演。10年の公演にブロードウェーのスタッフやアムラらが加わったことが、今回の出演につながった。昨年4月から英語を猛特訓。英語やダンス、歌、演技を収録したビデオを「CHICAGO」サイドに何度も送り、今年3月、主演が決まった。5月末に単身ニューヨーク入り。練習の毎日を送っていた。

 今後、ブロードウェーを活動拠点にしたいかと、問われると「アイ・ホープ!(希望します)

 いつでもチャレンジしたいです」と即答した。「CHICAGO」については「マイ・ライフ。ダイヤモンドみたいなもの。まだまだ磨きますよ~」と力を込めた。今後は16日までの残り5公演に出演。8月30日からは、東京・赤坂ACTシアターで開催の「CHICAGO」日本凱旋(がいせん)公演に出演する。

 ◆CHICAGO

 1920年代のジャズ全盛時代における米シカゴを舞台にした物語。愛人を殺害し投獄された主役女性ロキシー・ハートが、うそをついて無罪を勝ち取る姿と、逆に失ったものを、強欲、金もうけ、裏切りなどを織り交ぜて描く。実際の殺人事件がもと。75年、アンバサダー劇場の初演から77年までロングランを記録していったん閉幕。96年にリバイバル公演がスタートし、リバイバル作としてブロードウェー史上歴代1位のロングラン記録を更新中。