市川海老蔵(34)が謹慎を前向きに受け止めた。海老蔵は、8月の東京・新橋演舞場「花形歌舞伎」(4~23日)で「伊達の十役」に再挑戦することになり、12日、都内で会見した。10年11月に暴行事件で大けがを負い、半年間の謹慎生活を送った。昨年7月に舞台復帰して以降、東京で初めて会見した。この2年を振り返り、「何でも栄養だし経験は重要。必要のない経験は与えられないと思っている」と話した。さらに「残った命を考えると、この経験をどう生かしていくかが大切になってくる」と神妙に語った。

 歌舞伎への取り組みも変わったという。暴行事件は「新しいことに走った時期や、歌舞伎に抵抗があった時期もあったけれど、大体のことはやってきた」と感じていたころに起きた。謹慎し歌舞伎と向き合う時間ができた。「あのままやっていたら、歌舞伎が嫌になっていたかも知れない。でも今はもっとやりたいものが増えてきた。止まって良かった」と話した。

 海老蔵が1年半ぶりに挑む「伊達の十役」は7代目市川団十郎が初演し、現市川猿翁が復活させた。10役を演じ、50回もの早変わりや宙乗りがある。「セリフが300以上もあって大変」。猿翁の指名で今月は「楼門五三桐」で初共演中だが、先日、猿翁から「伊達十は君ね」と言われたという。「『伊達の十役』を頑張れなのか、任せるという意味なのか分からないけれど、感慨深いものがある。もう死ぬ気でかかるしかない」。本気モードの海老蔵がいた。【林尚之】