脱原発を訴える大規模な市民の集まり「さようなら原発10万人集会」が16日、東京・渋谷区の代々木公園で開かれた。主催者発表によると、参加者は予想を大幅に超える17万人で福島第1原発事故後に行われた脱原発集会の中では最大規模とみられる。メーン会場では呼び掛け人の音楽家・坂本龍一(60)やノーベル賞作家・大江健三郎さん(77)らが登壇。坂本は「たかが電気のために、なんで命を危険にさらさないといけないのか」と訴えた。

 気温30度を超える猛暑の中、代々木公園は朝から異様な熱気に包まれた。周辺にはプラカードやのぼりを持った人が詰め掛け、JR原宿駅から公園に向かう歩道は一時、身動きが取れなくなるほどだ。集会には主催者発表で17万人が参加。警備に当たった警視庁では約7万5000人と推計しているが、会場は高齢者から家族連れまで、世代を超えて脱原発を訴える人々で埋め尽くされた。

 政府による大飯原発再稼働決定以来、市民の声は盛り上がる一方だ。毎週金曜日の夜には首相官邸前で数万人規模の抗議活動が続けられており、この日もニュースを見て初めて参加したという人が多くみられた。

 大阪から朝一番の新幹線で来たという会社員山本匡人さん(34)は「集会に出たのは初めて。すごい人でびっくりしたが、みんな同じ思いなんだなと思った。来てよかった」と話した。埼玉県から駆け付けたパン店店主の新井孝男さん(54)は「NO

 NUKES(原発反対)」と書いたパンを胸に下げて参加。「官邸前にも毎週行ってます。もっと多くの人が声を上げてほしい」と汗を拭った。

 集会では呼び掛け人の1人、坂本龍一が登壇し「たかが電気のために美しい日本、国の未来である子どもの命を危険にさらすべきではない。子どもを守りましょう。日本の国土を守りましょう」と呼び掛けると、大きな拍手が起こった。

 坂本らは「原発ゼロ」を求める1000万人署名運動に取り組んでおり、7月8日現在で約785万人分が集まっている。一部はすでに先月15日、藤村修官房長官に提出したが、野田首相が大飯原発再稼働を決めたのはその翌日。坂本に続いて登壇した大江さんは「政府に侮辱されていると感じる」と怒りをあらわにすると、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 参加者は集会後、若者らでにぎわう表参道や渋谷をデモ行進。「原発止めろ」「命を守れ」と声をからし続けた。主催者などによると、今月29日にもキャンドルを持って国会議事堂を取り囲む大規模な行動を予定しているという。デモ行進を終えた都内の60代女性は「野田さんに声が届くまで続けたい」と話していた。【石井康夫】