<連載「気になリスト」(19)>

 あごものまね芸人HEY!たくちゃん(31)の露出が増えている。

 かつて朝青龍や長瀬智也らのあごものまねで脚光を浴びたが、トーク力とアドリブ不足で低迷。あご芸を磨き、レパートリーを150に増やす一方、念願だったラーメン店を東京・渋谷に開店。店名は「鬼そば藤谷」。芸と味の相乗効果でブレークなるか!

 麻生太郎元首相、石川遼、水谷豊…。著名人の顔イラストと自分のあごと口を駆使した「あごものまね芸」で注目された。ところが芸人が勢ぞろいしたトーク番組に出演しながら「何もしゃべれなかった。自分は単なるものまねスイッチャーだ」と自信を失った。自宅アパートに戻ると、あごのフリップなど、大事にしていたものまね道具を床にたたきつけた。「風呂で泣いちゃいました」。

 苦境を救ったのがラーメンだった。「月に10万円の仕送りとか、親に迷惑をかけていて。芸能界で終わったら(親もとの)北海道・小樽でラーメン店を開いて親孝行しようと」。動機は単純だが真剣だった。「ラーメンの鬼」の異名を持つ佐野実さん(61)に弟子入りを志願。講演会に足を運んで最前列に陣取り、佐野さんの顔まねでにらみつけた。大胆不敵な行動が気に入られ、弟子入りに成功した。腕を磨いて昨年、ラーメン界のM-1と言われる「NRA杯ラーメンコンテスト

 バトプリ」に優勝。開店に際して、佐野さんから愛用の白のユニホームを贈られ、「ラーメンもお笑いも、純粋さがないと駄目だ」と激励されたという。

 数ミリ単位で修正する「あご芸」の鍛錬も怠らない。顎(がく)関節症になりかけたこともあり、荒川静香のものまねは、医師から「1日2回まで」と制限されている。あごへの負担は大きいが、「朝ゴミを捨てる時のカラスも研究しています」と貪欲だ。落語家の独演会に呼ばれ、あご芸を披露する機会も多い。林家たい平に「極めなさいよ。世界へ行けるから」と背中を押された。

 1日16時間労働。忙しく店とステージを往復する毎日だ。「芸人でもあり、職人でもある。ハーフアンドハーフです」。

 最後に、野田佳彦首相、巨人原辰徳監督ら、あご芸の最新バージョンも公開した。自信作は「あんまり口に合わなかった料理を何とかしのぐ宮根誠司」だとか。宮根本人には「これはやめといて」とやんわり拒否されているという。【山田準】

 ◆HEY!たくちゃん

 本名・藤谷拓廊。1981年(昭56)7月2日、北海道小樽市生まれ。埼玉・上尾南高卒業後、東京整体専門学校に。芸名は所属事務所の先輩はなわが「元気良く呼ばれるように」と命名。特技は整体マッサージ。173センチ、血液型O。(11月30日付

 紙面から)