<連載「気になリスト」(33)>

 女優陽月華(32)は、09年の宝塚歌劇団を退団後、10年から舞台を中心にヒロインや主演を務め、ドラマはゲスト出演が多かった。演劇ファンには有名でも「あのきれいなお姉さんは誰?」と気になった視聴者は少なくないはず。元宝塚宙(そら)組娘役トップの美貌と気品は、近寄りがたいくらいだが、話すと明るく、さっぱりして親しみやすい。今も父の実家でもある都内の下町で暮らす。素顔は“下町の姫”だった。

 「宝塚って特別な響きがあるみたいで、宝塚時代、父の同級生のおじさんたちからは劇場に出かける時に『足立区のお姫さま、行ってらっしゃい』なんて声をかけられていました」

 当時は役によって金髪にしたり、フリフリの楽屋着を家で洗濯して干していたことも要因のようだ。「落ち着くから」と、今も暮らす下町が、親しみやすい陽月の下地になっているのかもしれない。

 見かけと違うたくましいエピソードもある。高校時代、神宮球場のスタンドでビール売りのアルバイトをして、売り上げトップだったという。

 「普通の女の子は缶しか持たせてくれなかったのに、私はサーバーを持たされました。生の方が売れるからありがたかったです。売り上げがいいから、国立競技場でも売ってみないかとも言われました。初めてのスカウトです(笑い)」

 かつての自分はネガティブで怖がりと思っていたこともあったようだが、最近、占いで「あなたは幸運体質100%」と出たという。嫌なことがあってもいい方に思想を転換できると。

 「確かに、今はあの時の嫌なことがあったから今があるんだと思えます」

 前向きな陽月は、いよいよ来年1月からTBS系「あぽやん~走る国際空港」で、初の地上波ゴールデンタイムドラマのレギュラーを務める。将来はドラマでも映画でも着物の似合う、色っぽい雰囲気を出せる役を演じてみたいという。理由は「扮装(ふんそう)するのが好きなのかも(笑い)」。やはり、ただきれいな姫ではない。【中野由喜】

 ◆陽月華(ひづき・はな)1980年(昭55)9月2日、東京生まれ。00年に宝塚歌劇団に入団し、星組に配属。07年、宙組娘役トップに就任。09年宝塚を退団後、10年の舞台「ULTRA

 PURE!」でヒロイン、12年「魔法のオルゴール」で主演。ドラマは10年TBS系「ハンチョウ3」、12年テレビ朝日系「相棒10」などに出演。映画は今年公開の「ミューズの鏡」。血液型O。(12月27日付

 紙面から)