女優長沢まさみ(25)が異国の地で、奮闘している。本格的海外進出作となる台湾の連続ドラマ「ショコラ」(今年夏ゴールデンタイム放送予定)に主演。昨秋から台湾に長期滞在し、キッチン付きのアパートを借りて撮影に臨んでいる。北京語のセリフを必死で覚え、撮影の違いに驚きながらも、出演陣、スタッフと国籍を超えて取り組む芝居を心から楽しんでいる。

 撮影現場の人気ケーキ店で英語、北京語、日本語が飛び交う中、長沢が言った。「みんな日本語のドラマとかでちょっと分かるし、英語は堪能。北京語は私もちょっとだけ分かるから」。木漏れ日が差し込むテラスで撮影を待つ間、共演俳優の言葉に声を上げて笑っていた。

 セリフの大部分は北京語。リスニングは上達したが、発音の難しさに苦しんだ。台湾入りするまでは、日本で北京語のレッスンを数回受けただけだった。「こっちに来て、あれ、チャンザー・ヤーメイ(長沢の台湾表記)大丈夫?

 みたいな空気になっちゃって。あ、ヤバいなって」。

 撮影は昨年9月に開始。撮影が始まる2週間前には台湾入りした。毎日9時間、北京語のセリフを猛特訓した。「この国に対しての気持ち、誠意が伝わるものだから、ちゃんとやらなきゃと思いました」。

 台湾の撮影スタイルに驚くことも多かった。

 「不思議なことに台湾ドラマって、泣くシーン、雨にぬれるシーン、キスシーンがホントに多くって。感情表現が割とストレートだから、1日何回泣いてるんだろうって。涙腺がおかしくなっちゃいますね。それに雨の量が尋常じゃないんです。ずぶぬれです。キスシーンは台本を読んでいると、ありゃありゃ、また、みたいな(笑い)。これぐらいのことは愛情表現の1つ。日本だと、『やだ、もう、はしたない』みたいになるけど、そうじゃないんだなって教えてもらいました」。

 台湾滞在は約4カ月。「日本と変わらない生活をしています」。キッチン付きのアパートを借りて、余裕がある時は自分で和食を作った。時々、スカイプ(インターネット電話)で日本の友人と話をした。

 北京語を話してみたい。好奇心から飛び込んだ台湾ドラマ撮影は間もなく終わる。「お芝居に国籍は関係ないんだなって。掛け合いの芝居が成り立った時はすごく楽しい。言葉が通じなくても通じ合っているなって感じるから」。スタッフと同じ弁当を食べ、一緒に差し入れをつつく。ヤーメイという名前がしっくりくるほど、溶け込んでいる。【近藤由美子】

 ◆ショコラ

 窪之内英策氏が手掛けた日本の人気コミックが原作。台湾版は設定を一部変更。長沢は日本で生まれ育った華僑の音大生を演じる。長沢演じる主人公が、亡母の駆け落ち相手で、ケーキ屋を経営するヤクザの元組長の元に転がり込むことから始まるストーリー。血縁関係がない2人の絆や元組長の子分らとの友情、恋愛模様を描く。長沢の名前の台湾表記は「長澤雅美(チャンザー・ヤーメイ)」。共演は台湾人気俳優ラン・ジェンロンら。1話90分で全13話予定。アジアや北米など十数カ国でも放送予定。