渡哲也(71)と弟渡瀬恒彦(69)が、3度目の兄弟共演を果たしたことが13日、分かった。渡瀬が主演のTBS系月曜ゴールデン「西村京太郎サスペンス

 十津川警部シリーズ50作記念作品『消えたタンカー』」(9月9日午後9時)で、渡は殺人犯役を演じた。2人の共演は、2011年(平23)12月23日放送の同局系ドラマ「帰郷」以来2年ぶりだが、その際、「最後の兄弟共演」と宣言した渡を、渡瀬が体当たりで口説き落としていたことも分かった。

 弟の熱意がかたくなな兄を動かした。前回で最後のはずだった渡、渡瀬の兄弟共演が、三たび実現した。

 2人はNHKで71年4月から約1年間放送された連続ドラマ「あまくちからくち」で初共演。以来約40年ぶりの共演となった「帰郷」が11年12月にクランクアップした際に心境を聞かれ、そろって寂しげな表情を浮かべた。最後のつもりで撮影に臨んでいたからだ。渡はあえて「弟とやるのは十分。遠慮させていただきます」と言った。一方、渡瀬は「前言を翻します。やってもいい」と未練をのぞかせた。

 そんな渡瀬に、92年4月放送の第1作「札幌駅殺人事件」から全作品に携わる森下和清プロデューサーが、渡への出演交渉を託した。95年12月放送の10作目「ミステリー列車が消えた!」前後から兄弟共演のプランを温め続け、50作記念ということで、渡瀬に話を持ちかけた。

 渡瀬は森下氏に「難しいよ。2度とないと言ってたし、兄貴は頑固だからな」と言いながらも、渡に電話で出演を打診した。予想通り、「世間的に(最後と)言っちゃった以上、まずいんだよ」と固辞された。だが、あきらめなかった。渡の自宅に足を運び「100本もやるわけじゃない。50作記念だから頼む、出てくれよ」と熱い思いを伝えるなどし、1カ月かけて渡の首を縦に振らせた。

 「帰郷」では、21年間にわたり確執が続いた医者の兄弟を演じた。今回は渡が、巨大タンカー炎上沈没事故に端を発した連続殺人の捜査線上に浮かんだタンカーの元船長を演じ、渡瀬演じる十津川警部と対する。原作では伊東四朗演じる亀井刑事との三すくみでの対決となるが、ドラマでは渡と渡瀬が厳しいせりふのやり取りで一騎打ちする形にアレンジ。そこが見どころとなりそうだ。

 撮影は4月に終了。渡は「50作目に力を貸してほしいと恒彦に言われ、引き受けました。20年以上続くのは素晴らしいこと。伊東四朗さんと恒彦と他の出演者の方々、スタッフのたゆまぬ努力があったことと思います」と振り返った。

 今作では伊東四朗と孝明、せんだみつおと雄太の父子共演も実現した。

 ◆「消えたタンカー」

 インド洋で日本の大型タンカーが炎上沈没して6人が救出されるも、1カ月後に2人が射殺された。十津川(渡瀬)と亀井(伊東)は、船舶会社社長の黒川秀隆(川地民夫)を訪ね、同席した元船長の奥平浩一郎(渡)が10年前に海賊に襲撃され、3人の船員を射殺されたと知る。さらに同事件の船の乗組員で、沈没事故の生存者2人も殺された。そんな中、沈没事故の生存者で唯一、行方不明だった小島史郎(伊東孝明)が奥平と連絡を取り、奥平が連続殺人に関わったことが判明した。