今井美樹(50)がこのほど都内で日刊スポーツの取材に応じ、憧れの人や家族への思い、移住した英国での生活を語った。現在は夫でギタリスト布袋寅泰(51)と11歳の長女と3人で英国で暮らすが、歌手活動も続けており、松任谷由実(59)の名曲をカバーしたアルバム「Dialogue」を10月9日に発売する。幼いころからユーミンの大ファン。歌手デビュー直後までの自分を支えてくれた12曲を厳選した記念盤だ。

 テレビドラマ主題歌だった「あの日にかえりたい」を聴いた時から、ユーミンの大ファンだった。当時小学6年生。今も変わらず、憧れの存在だ。ユーミンのカバーアルバム発表プランを知った時、ためらった。「大好き過ぎて、私なんかが触っちゃいけないって」。本人と会う機会は何度もあったが今でも直立不動になる。ライブを見た時は感動のあまり、思わずハグをお願いしたこともあったという。「ギュッとしてもらって、私、オイオイ泣いちゃって。困りますよね、ユーミンも」と照れた。

 カバーアルバムでは12曲歌った。青春時代や上京後に歌手デビューを経てスターダムに上るまでの日々を支えてくれた87年までの名曲から厳選した。「こんな大人に憧れたとか、確固たる強い思いがある曲を歌いたかった。宮崎の片田舎で過ごしている時の青春時代はずっとユーミン。全部ユーミンのアルバムから教わり、いろんな夢を見ていた。東京に出て大都会で暮らしていても、田舎者がそこにポツンといる感じ。孤独を感じた時、いつもそばにユーミンの曲がありました」という。86年に歌手デビューしたが「音楽がやりたいわけではなく、どうすればいいか分からなかった」と明かす。「自分らしい呼吸ができるのは、ユーミンの音楽に包まれた時間だった気がする。今回はあえてそこで切り取ったんです」と選曲の理由を説明した。

 思い入れが強すぎて細かくこだわる自分を、夫でアルバムのプロデューサーも務めた布袋がフォローしてくれた。「彼とはいっぱい戦った。彼はいい意味で譲らないところがありました」と振り返る。布袋からは「君とこのメロディーが出合ったことで、この曲は違う花が咲く。この花の良さを伝えるべきだ。君の個人的な感情だけで小さい作品になるのは絶対にもったいない」と諭されたという。「幅広い人たちに聴いてもらうためには、彼の客観的ないい目が必要でしたね」。

 環境の変化もアーティストとしての生き方に影響を与えている。布袋の決断を受け入れ、長女と一家3人で英国に移住してからちょうど1年が過ぎた。「特に最初の3カ月は、あっという間でした。初めはあぜんとして。ビックリしちゃって」。ままならないことも、ポジティブ思考で受け入れた。「言葉の問題はありました。私の言葉を一生懸命聴いてくれるんだけど、普通の速いスピードで話してくる。しょうがないよねと思うこともいろいろありました。でも日本と比べちゃだめ。『郷に入れば郷に従え』ですね」。

 移住して気付いたことも多かった。「英国はすごく人間的だと思った。近所のお店なんて、みんな4時半、5時に閉まっちゃうの。でもそれは仕事をしている人も帰れる時間、ちゃんと生活ができる時間なんだと。オンオフがしっかりして、人間的な暮らしができているんです。(それまで)家庭人として暮らす時間がなかったから、余計にそれを感じました」。

 仕事と家庭の両立について考え方も変わった。「東京に出たばかりの1年以外はずっと仕事をしてきた。仕事は大事なこととして生きてきました。これまでは娘に『ごめん』というところがいっぱいありましたが、暮らす中に、そこに仕事があるということを、50にして気付けたことは大きいです」。これからの自分の姿がイメージできてきた。「ここでわが家のペースを見つけていけると思いました。東京だったら、それは無理。彼に引っ張られるようにして渡りましたけど、新しい環境にチャレンジできている感じかな」。

 「ある意味、触っちゃいけない曲たちをあえて今、歌うならどう歌えるのか、チャレンジしたい気持ちが強かった」というユーミンのカバーアルバム。音楽にも環境の変化にも挑戦しながら向き合う姿勢が、自分に刺激を与えてくれていると実感している。【近藤由美子】

 ◆今井美樹(いまい・みき)1963年(昭38)4月14日、宮崎県生まれ。モデル活動を経て、84年TBS系ドラマ「輝きたいの」で女優デビュー。同局系「想い出にかわるまで」など多くのドラマに主演。86年シングル「黄昏のモノローグ」で歌手デビュー。「PIECE

 OF

 MY

 WISH」「PRIDE」はミリオンセラー。99年に布袋寅泰と結婚。02年に長女を出産。168センチ。血液型AB。◆「Dialogue~Miki

 Imai

 Sings

 Yuming

 Classics~」収録曲◆(1)卒業写真「COBALT

 HOUR」75年(2)中央フリーウェイ「14番目の月」76年(3)あの日にかえりたい

 *シングル曲

 75年(4)人魚になりたい「SURF&SNOW」80年(5)やさしさに包まれたなら「MISSLIM」74年(6)シンデレラ・エクスプレス「DA・DI・DA」85年(7)ようこそ輝く時間へ「PEARL

 PIERCE」82年(8)霧雨で見えない「ダイアモンドダストが消えぬまに」87年(9)青春のリグレット「DA・DI・DA」85年(10)青いエアメイル「OLIVE」79年(11)手のひらの東京タワー「昨晩お会いしましょう」81年(12)私を忘れる頃「VOYAGER」83年※題名、原曲の収録アルバム題名、発売年の順