お笑いタレント桜塚やっくん(37=本名・斎藤恭央さん)が6日、遺族と無言の対面をした。5日夜、山口県美祢市内の中国自動車道で事故死。死因は心臓破裂で、車を運転していたのは桜塚さんだった。一夜明けたこの日、両親と実兄が山口県警山口南署で遺体を桜塚さんと確認。夜には横浜市内で取材に応じ、父親が「顔はきれいだった」などと明かした。

 桜塚さんの両親と実兄は、午前中に桜塚さんの遺体と対面し、夕刻に横浜市内の自宅に戻った。約30人の取材陣が待ち受けていたが、立ち止まって事故の状況と心境を語り始め、時折、声を詰まらせた。

 「運転していたのは恭央でした。彼が死んだのはしょうがない。彼の運転ミスで事故を起こした。砂守さん、遺族に申し訳ない」

 5日午後4時50分の事故発生から約2時間後の午後6時40分、山口県警高速機動隊から事故の連絡を受けたという。桜塚さんは所属していた音楽バンド、美女♂menZのメンバーと中国自動車道を走行中。6日の熊本県荒尾市内で行われるミニライブ出演に備え、ワンボックスカーで向かっていた。同県警の説明によると、事故後、後部座席に座っていたバンドマネジャー兼プロデューサーの砂守孝多郎さん(55)が、外に出ようとした瞬間、後続車にひかれて即死。桜塚さんは2次災害を防ごうと車から降り、後続車を止めるために事故車の後ろに回っていた。携帯電話で警察や消防署に連絡をしながら車を誘導している際に、後続車に激突して命を落とす形になったという。

 両親と兄浩尉(ひろやす)さん(38)は、この日午前に同署に着いて桜塚さんの遺体と対面。心臓は破裂し、肺も半分に縮み、頭蓋骨は陥没していたという。父充さん(63)は「顔と体はきれいでした」と神妙な面持ちで話しながら、桜塚さんに「お父さんと呼んでくれ」と声をかけたことも明かした。

 両親と桜塚さんが最後にあったのは、母の日の5月12日だった。母美佐緒さん(61)にバラの花をプレゼントするために実家に戻り、「今年は結婚する。相手はこれから探すけど、子供をたくさん産める若い子がいい」と話していたという。充さんは「冗談と分かっていたけど、楽しみにしていた」と話す一方で、「病気だったら心の準備ができたのに…。本当につらい」と言った。美佐緒さんは「良い思い出しか浮かんできません。空いた時間には(実家に)顔を出してくれてた。本当に悲しいです」と涙ながらに語った。その後、取材に応じた浩尉さんは「自分の中でまだ理解できません。子供のころ、悪ふざけをしたのが思い出です」と気丈に話した。

 通夜、葬儀・告別式の日程は未定だが、質素に営む意向も明かした。

 桜塚さんの遺体を乗せた車はこの日午後1時に山口南署を出発し、約12時間後の7日午前0時50分頃に、遺族の待つ横浜市内の実家に到着した。車から出された遺体はストレッチャーに乗せられており、すぐに充さんと浩尉さんらが家の中に運び入れた。

 KAZUAKIは、桜塚さんのバンド愛などについて語った。「『自分はお金には困っていない。アーティストは1回売れれば、その後つなげる。バンドの若いメンバーがバンドだけで食べていけるように1曲は当てたい』と話していました」。

 「スケバン恐子」のキャラクターで芸人としてブレークした桜塚さんだったが、10年9月に大手事務所を離れた後は、同年に結成していた美女♂menZの活動に力を入れ始めた。「ソロでの仕事が入っても、依頼主にバンドのグループとして行かせてもらえないかと提案することが多かった。仕事はギャラが安くても断ることはなかった」。

 1人暮らしだったが、最近はペットの犬(ポメラニアン、名前はチェリー)を飼うようになり、溺愛していたという。

 バンドでの国内遠征には、経費的な問題もあり、自腹で購入した中古のワンボックスカーを使用。それが事故車両になった。運転はメンバーが交代で運転していたが、事故時は桜塚さんがハンドルを握っていた。桜塚さんは日ごろから「疲れたらすぐに代わるから」と、ほかのメンバーに気遣いを見せていた。

 11年3月、女性への準強姦(ごうかん)容疑で書類送検されたと報じられて以降はテレビ出演の機会が激減。「やられた。事実ではない」と悔しがる一方で、「仕方ない。これからの自分を見てもらうしかない。割り切ってやっていく」と前向きだったという。最近はバンドでの仕事も増え、フランス公演も実現。「絶対に(日本)武道館に行こうな」と口グセのように話していたことも明かした。

 ファンも追悼のコメントを寄せた。桜塚さんの公式ブログには、桜塚さんの最終更新のコメント欄に、6日夜現在で1万7000件もの投稿が寄せられた。普段の書き込みは1つのテーマに100件前後だが、「ご冥福をお祈りします」「今までたくさん笑わせてくれてありがとう」などの記述が相次ぎ、「ブログ更新してください

 お願いします!!」と悲痛な叫びも投稿されていた。桜塚さんの最終投稿は今月3日で、「週末は九州だし、体力残しておかんとね^

 ^(^▽^;)」などと書き込んでいた。

 ◆事故メモ

 5日午後4時50分ごろ、山口県美祢市の中国自動車道下り線で、桜塚さんら5人が乗ったワンボックスカーが追い越し車線で中央分離帯に衝突し、停止した。桜塚さんら2人が車を降り、路上に出たところ、別々の後続車に次々とはねられた。乗用車にひかれた桜塚さんは、心肺停止状態で同市内の病院に運ばれた後、死亡が確認された。山口県警によると、死因は心臓破裂だった。同バンドのマネジャー兼プロデューサー砂守孝多郎さん(55)も、トラックにひかれて即死だった。