<連載「気になリスト」(26)>

 25歳、女形の成長株だ。歌舞伎俳優中村梅枝。すらりとしたスタイル、色気ある表情、艶のある声。登場するとパッと舞台が華やぐ。今月は若侍役で違った魅力を見せている。歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」(~25日)で上演中の「義経千本桜」。夜の部「木の実」「小金吾討死」で若侍の小金吾を演じている。主君の妻子を守り抜き、その死が次の幕につながる重要な役だ。女形をメーンにやってきており、立ち回りまである立ち役(男性の役)は初めて。「まさか自分がやると思っていなかった役。聞いた時は『僕でいいんですか!?』とすごく驚きました」という。「刀を振り回したことがなかった。刀を覆う柄袋や、お金を入れて体に巻いて使う胴巻き、初めて名前を聞いたり見たりする小道具もたくさんでした。プレッシャーでしたけど稽古しかない。焦っても幕は開いてしまうので」。

 抜てきしたのは片岡仁左衛門だ。仁左衛門はいがみの権太で同じ舞台に立つ。「稽古初日、松嶋屋のおじさま(仁左衛門)に『楽屋に来ぃや』と言われ行きましたら、せりふを全部言って教えてくださいました。幕が開いても毎日、小道具の使い方から立ち居振る舞いまで教えてもらっています。褒めてもらうこと?

 ないです、ないです」。

 小金吾と格闘する毎日で立ち役の楽しさを再認識した。「やっぱり最終的に幕を閉めるのは立ち役ですから楽しい。小金吾以上に強い立ち役にまで広げるつもりはないですけど(『菅原伝授手習鑑』の)桜丸、『御存鈴ケ森』の白井権八をやってみたいと思います」。

 気取らない素顔も魅力だ。丸1日休みがあったらディズニーランドに行きたいという。「結婚願望あります。デートも普通にしますよ」。1人暮らしの計画を練っているが、一獲千金を狙い「(高額当せんくじ)ビッグを買ってます」。

 最近はドラマや映画など異なる分野で活躍する歌舞伎俳優が注目されている。「僕は歌舞伎一本でいけるならそうしたい。僕たちの世代の歌舞伎を作り上げたい」と頼もしく語った。【小林千穂】

 ◆中村梅枝(なかむら・ばいし)1987年(昭62)11月22日、東京都生まれ。屋号は萬屋。中村時蔵の長男。94年歌舞伎座での「幡随院長兵衛」「道行旅路の嫁入」で初舞台。歌舞伎座で上演中の「義経千本桜」の「鳥居前」では静御前も務める。11月は同所で「仮名手本忠臣蔵」に出演。高校時代はゴルフ部でベストスコア78。171センチ、65キロ。血液型B。