タレントで歌手のやしきたかじんさん(享年64)の訃報から一夜明けた8日、故人を慕っていた橋下徹大阪市長(44)が政界進出の恩人を思い号泣した。市役所で取材陣を前に「優しくて…強い人…」と口にすると大粒の涙をあふれさせた。3日に亡くなったたかじんさんは一部の親族だけに密葬で送られたが、橋下氏は訃報が伝わった日時や、遺体に会ったかなどの問いに「控えたい」とし、遺体と対面したことを否定しなかった。

 唇を真一文字に結び、目は真っ赤。「そらもう、優しいし…強い人」と口にすると、橋下氏の目に大粒の涙があふれた。「あの…お元気になられることをひじょうに願っていましたからね」。人目をはばからず泣いた。茶髪のタレント弁護士から府知事に。「たかじんさんの番組で顔と名前を広く知ってもらった。それだけで当選したようなものですから」と振り返った。

 03年から読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」にレギュラー出演。08年に府知事選に出馬し、当選した。たかじんさんから「仮に2期やっても46歳。今や、行け」と背を押され出馬した。昨年3月、たかじんさんが一時復帰した際、テレビ大阪「たかじんNOマネー」に出演。その後、同じ車でたかじんさん宅へ行った。「会えばいつも、大阪を何とかしてくれって、大阪の話ばかりで」。最後の会食になった。

 因縁もあった。橋下氏は11年、平松邦夫前市長の任期満了にともなう市長選へ鞍替え出馬。平松氏と争い勝利した。たかじんさんは、MBSアナ時代から平松氏とも親交があり橋下、平松両氏を自宅に招き、和解させようとしたことがあった。当時たかじんさんは「大阪が元気になって日本を動かさなあかん。2人とも同じ思いやったのに、なんであかんねん」と諭した。

 昨秋に再々婚した32歳下の夫人、前々妻夫人との間の娘ら、ごく近い身内だけで、実母にも知らせずたかじんさんの密葬を済ませ、7日になって伝えられた。

 橋下氏は訃報を受けた日を「事情があって控えさせていただきたい」とした。お線香をあげたのか、遺体に会ったのかとの問いにも「控えさせてください」と繰り返した。日程的には対面は可能で、その可能性を否定しなかった。