昨年12月30日に解離性動脈瘤(りゅう)で亡くなった歌手で音楽プロデューサーの大滝詠一さん(享年65)は、最後に「ママ、ありがとう」と叫ぶように言い、亡くなっていた。21日、都内で行われたお別れの会で静子夫人が明かした。会には女優松たか子(36)ら約250人が参列。多方面から「師匠」と呼ばれた秘話が明かされた。

 会の最後、夫人が亡くなった時の様子を明かした。都内の自宅で夕食後、新聞に目を通していた大滝さんは「東北も少しずつ復興しているようだね」と感想を漏らしていた。夫人が背を向けてリンゴをむいていると、突然、「ママ、ありがとう!」と大声。夫人が駆け寄った時にはイスにもたれかかるような体勢で顔は暗紫色になっていた。

 「皆さんに『ありがとう』を伝えたかったんだと思います」(夫人)。

 参列者からは「師匠」と呼ばれた人柄が語られた。俳優佐野史郎(59)は、しみじみと言った。「大滝さんが言った『期待は失望の母』は、落ち込んだ僕を元気にしてくれる。僕の出た作品にも小まめに感想やアドバイスをくれました」。

 テレビ出演は嫌いでも、見るのは好きだった大滝さんは映画やドラマに詳しく、自宅にはビデオ店のようなストックがあった。

 タレント清水ミチコ(54)の音楽ネタの「師匠」でもあった。「テレビで音楽ネタをやると、すぐにメールで。『こうした方がいいんじゃない』って」。

 米国ポップス通で知られた大滝さんだが、クレージーキャッツをはじめ、往年のコミックソングへの造詣も深かった。

 DJ出身で元ニッポン放送社長の亀渕昭信氏(72)は「(社長退任後)僕が落ち込んでいると思って、もう1回DJやってみればって言われまして。おかげで(NHKで)4年目になりますが、もっと彼の感想を聞きたかったです」。

 はっぴいえんどの細野晴臣(66)松本隆(64)をはじめ、佐野元春(58)あがた森魚(65)甲斐よしひろ(60)ウルフルズ、サンボマスター、高田文夫(65)ら参列者は実に多彩で、大滝さんの幅広い交流がうかがえた。【相原斎】

 ◆大滝詠一(おおたき・えいいち、本名・栄一)1948年(昭23)7月28日、岩手県生まれ。早大中退。在学中の70年、細野晴臣や松本隆らとはっぴいえんどを結成。81年に「ロング・バケーション」でレコード大賞最優秀アルバム賞。97年、フジテレビ系ドラマ「ラブジェネレーション」の主題歌「幸せな結末」がミリオンヒット。松田聖子「風立ちぬ」などプロデュース作品多数。